前回は、株式評価の純資産価額方式について解説しました。今回は、プライベートカンパニー設立のメリットとデメリットについて見ていきます。
個人の場合と比べて「損益通算」が容易に
プライベートカンパニーのメリットをまとめると、下図表のようになります。相続人をプライベートカンパニーの役員や従業員とすることで、「相続人への所得分散」が可能になりますし、株価対策を行った上で株式を贈与すれば、「相続人への所得と資産の移転」が少ない負担で行えます。
プライベートカンパニーのメリット
「損益通算が容易」「経費の範囲が拡大」というのは、いずれも個人で資産を保有している場合との比較です。例えば、個人では不動産所得の赤字は同じ年の他の不動産所得としか損益通算できませんが、法人ならすべての所得を合算できますし、赤字の繰り越しも可能です。
経費の範囲についても、法人の方が個人より幅広く認められます。「意思能力を失っても、財産管理できる」「名義変更が容易」というのは、これからの高齢化社会でますます重要になっていくでしょう。
設立・維持にかかるコストに留意
意思能力がなくなると、基本的に契約や遺言などの法律行為ができなくなります。ところが、資産がプライベートカンパニーの保有であれば、その管理や処分については取締役会が株式総会の決定で行えます。また、株式の名義変更も比較的簡単に行えます。
一方、プライベートカンパニーにはデメリットもあるので注意が必要です。例えば、株主が増えすぎると株主総会での意見集約に手間取ったりして、財産管理が大変になります。
また、保有する資産からの収入によっては、所得税より法人税の方が高くなる場合があります。その他、設立費用(約30万円〜)、税理士への報酬、法人住民税の均等割り(東京特別区の場合は約18万円)などのコストも考慮する必要があるでしょう。
個人と法人の有利・不利(税制上)
株式会社福田財産コンサル
代表取締役
1959年生まれ。ミサワホームの資産活用部門責任者、アパマンショップの不動産投資会社の責任者を経験後、2004 年に独立系資産経営コンサルティング会社として、株式会社福田コンサルを設立。特に不動産を活用した相続税対策のコンサルティングに絶大な強みを持ち、17億円も相続税を減らすなど同業他社の追随を許さない専門力を持つ。コンサルティングしてきた資産は総額1200億円超。ファイナンシャルプランナー、公認不動産コンサルティングマスターおよび相続対策専門士統括講師、相続アドバイザー養成講座講師。相続税対策や不動産投資に関する複数の著書あり。
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連載相続対策の切り札「プライベートカンパニー」の活用術
木村祐司税理士事務所
税理士・アセットコンサルタント
1967年生まれ。中学卒業後、タンカーの甲板員から始まりブルーカラーの仕事にいくつか従事する中で、給料から天引きされる税金に疑問と興味を持ち税理士を志す。1998年12月税理士試験に合格。当初はコンサルティングファームでファイナンシャルディレクターとしての経験を積み、企業会計実務の知見を得た後に木村祐司税理士事務所を開設、現在に至る。
経営者や資産家の財務・税務コンサルティングを強みとし、絶対的な信頼感のもと企業の資金調達、経営管理、節税対策や資産管理、事業承継までを任されている。資産3億円以上を得意とし、相続税・贈与税だけではなく、資産運用の観点からトータル的なTAXプランニングの提案・実行をおこなう。
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