(写真はイメージです/PIXTA)

相続税と贈与税の一体化が噂される昨今。令和4年度『税制改正大綱』には「より一体的に捉えて課税する観点から」「中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と記載されました。相続税と贈与税が一体化された場合、相続税対策にどのような影響があるのでしょうか。岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士が解説します。

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    暦年贈与に要注意…税理士がおすすめする相続税対策

    当税理士事務所は、なぜWさんにお孫さんへの暦年贈与を思い留まるよう申し上げたのでしょうか? それは、暦年課税制度の年間110万円という基礎控除額が、贈与者ひとりに対してではなく、受贈者ひとりに対する限度額だからです。

     

    例えば、そのお孫さんが1月1日から12月31日の1年間に、娘さんの舅から110万円、Wさんからも110万円受け取ったとしたら、基礎控除額を超えてしまいます。せっかく暦年課税制度を利用して贈与しても、お孫さんに贈与税が課税されてしまうのです。

     

    暦年課税は確かに相続税対策として利用しやすい贈与税の課税制度ではありますが、注意点もあることを忘れてはいけません。暦年贈与を始めて3年以内に贈与者が他界して相続が発生すれば、受贈額は相続額に組み込まれ、相続税が課される可能性があります。

     

    また、孫の誕生日に何年間も110万円を贈与したとしましょう。毎年一定の日に一定額を贈与し続けると、定期金給付契約に基づく贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。暦年贈与とするには、1年ごとに贈与者と受贈者で契約を結ぶことが必要です。

     

    「じゃあ、どうしたらいいのか」Wさんは頭を抱えました。ご安心ください、まだ方法はあります。前回の『2023年に廃止決定の「ジュニアNISA」に注目が集まる意外なワケ』にも書きました通り、こういう場合、当税理士事務所がおすすめするのは「都度贈与」です。

     

    都度贈与とは、祖父母や親など、扶養義務のある者が生活や教育に必要な費用を負担することで、この費用の贈与には贈与税がかかりません。国税庁『No.4405 贈与税がかからない場合』には、以下の記載があります。

     

    “夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

     

    ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

     

    なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。”

     

    「相続税と贈与税の一体化」は令和3年度中に具体的な改正案が出ませんでした。令和3(2021)年12月10日に政府与党が発表した「令和4年度税制改正大綱」においても、令和4年度税制改正の基本的考え方として「相続税と贈与税の一体化」は“本格的な検討を進める。”という表現にとどまりました。

     

    ただし、“あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家庭内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。”との文言が付け加えられました。

     

    具体的に「贈与税の非課税措置」と示されており、今後、本格的に議論されることになるでしょう。たとえ暦年課税制度の廃止が決定されても、慌ててはいけません。贈与したい相手がお子さんやお孫さん、兄弟姉妹であれば、都度贈与の活用をおすすめします。

     

    保育園や幼稚園の入園料・保育料、お稽古事のレッスン費、制服や教材の購入費用、将来の入学費や学費……その費用が発生する都度、直接支払ってあげることです。両親と「4つのポケット=両家の祖父母」で、誰が何をと話し合っておくのも大切かもしれません。

     

    年末年始は家族で話すチャンスです。変異株も出現し、新型コロナはまだまだ予断を許しませんが、たとえオンライン会話だとしても、普段よりも時間と心に余裕があるのではないでしょうか。特に富裕層ご家族は、新年に話し合っておきたいことが多々あります。

     

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