(写真はイメージです/PIXTA)

相続税と贈与税の一体化が噂される昨今。令和4年度『税制改正大綱』には「より一体的に捉えて課税する観点から」「中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と記載されました。相続税と贈与税が一体化された場合、相続税対策にどのような影響があるのでしょうか。岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士が解説します。

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    宅地価格が下落する?大都市を襲う「2022年問題」

    令和4年度の税制改正は、コロナショックにより打撃を受けた経済の立て直しと格差是正を、緊急課題として軸足が置かれているようです。格差是正は国内だけでなく、世界的にもコロナ禍での緊急対応が求められていますので、当然といえば当然でしょう。

     

    従業員の給与引上げに積極的な企業への「賃上げ税制」、「住宅ローン減税」の延長と控除率の0.7%引下げなどが実現化の見通しです。しかし、安心してばかりもいられません。令和4(2022)年、富裕層にとって気になる相続税に関する動向を挙げてみました。

     

    2022年問題

     

    「生産緑地」の所有者は、ぜひとも新年にご家族で話し合いたい問題です。特に平成4(1992)年に「生産緑地」の指定を受け、今年「30年間の営農義務」などが解除される農地や林地の所有者は、売却するか、「特定生産緑地」申請をするか話し合うべきでしょう。

     

    大都市圏では今年「生産緑地」の解除を迎えた売却地が不動産市場に溢れ、宅地価格の下落が懸念されています。これが「2022年問題」です。「特定生産緑地」にすれば、固定資産税、相続税、贈与税の減額や納税猶予が10年間引き続き受けられますが、「営農義務」も継続します。跡継ぎ問題を含めて、ご家族での話し合いが必要になるかと思われます。
     

    海外資産の税務調査

     

    格差是正の一環として、海外では富裕層に対する課税強化への模索が活発化しています。令和3(2021)年5月、OECD(経済協力開発機構)は相続税の改革を提言しています。また、10月にICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が「パンドラ文書」をリークし、世界のスーパーリッチによる租税回避が暴露された影響もあるかもしれません。

     

    国内でも、国税庁による税務行政のDX化が進み、海外資産の税務調査に一定の成果を上げています。金融取引の国際化・ネット化に伴い、デジタル資産に対する調査強化の動きもあります。お正月は将来の相続へ備える良い機会です。海外資産や暗号資産の確認、ビットコイン等のパスワードを親族にどう伝えるかといったことも検討すべきでしょう。

     

    新年を迎えたら、この機に遺言証書の作成をという方もいらっしゃるでしょう。ご家族と話し合うべきことはよく話し合い、迷うことは専門家にご相談いただければと思います。

     

     

    岡野 雄志

    岡野雄志税理士事務所

     

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