(※写真はイメージです/PIXTA)

後継者がいないために事業を存続できない…日本には今、こうした「廃業するにはもったいない会社」が数多く存在します。一般的な事業承継といえば、「親族内承継」や「社内承継」、「第三者へのM&A」の3つ。しかし、少子高齢化や株式譲渡などのハードルから、いずれも選択できずに結局廃業を選ぶ会社も少なくありません。自らも資金面の問題から一般的な手法では会社を継ぐことができなかったという宮部康弘氏が、日本の事業承継問題の実態を解説します。

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黒字経営でも、事業の将来性があっても「廃業」

私が、経営者になりたいと考えている人と、後継者がいなくて困っている中小企業経営者とを結ぶサービス「LEADERSプロジェクト」を立ち上げた背景には、日本の中小企業が抱える社長の高齢化や後継者不在の問題があります。

 

中小企業の社長の高齢化は以前から社会問題になっており、事業承継で若返りを図ることが推進されてきました。しかし、歯止めはかかっていません。2020年には国内約94万社を対象にした調査で、社長の平均年齢が初めて60歳を超えました。

 

調査元である帝国データバンクは「年齢に関係なく第一線で活躍し続ける社長が多いことを示している反面、事業承継の観点では課題の一つになり得る。」と指摘しています。

 

中小企業庁の『事業承継マニュアル』によれば、廃業を予定している中小企業のうち、約3割は廃業の理由に「後継者の確保が難しい」を挙げています。廃業予定企業の4割超は「今後10年の事業の将来性はある」と答えているにも関わらず、廃業を選択するしかない現状が浮き彫りとなりました。

 

東京商工リサーチの調査によると休廃業・解散に至った中小企業の経営状況は、6割は黒字(売上高当期純利益率がプラス)です。利益率が5%以上の企業も25%あります。これは東京の中小企業が対象ですがおそらく全国的にも同様の傾向があるはずです。

現状の「廃業予定企業」だけでもGDP損失額は26兆円

事業承継はそれぞれの会社の問題と思われがちですがそうではありません。

 

日本の全企業のうち99.7%は中小企業が占めています。この国の経済を支える屋台骨である中小企業が廃業でどんどん消えていくと、日本の国力が大きく失われてしまうのです。

 

だからこそ国も危機感を持って事業承継の問題を解決しようと、様々な取り組みをしています。それがなかなか効果を表さず、中小企業の廃業は年々増える一方なのは大きな社会問題です。

 

中小企業の廃業によって日本の経済にどのくらいの打撃があるかを専門家たちが予測しています。

 

中小企業庁の安藤久佳長官(当時)は、2019年の年頭所感で次のように述べています。

 

「経営者の高齢化は大きな課題です。2025年には経営者の6割が70歳を超え、多くの中小企業が廃業する結果、約650万人の雇用が失われるとの分析もあります。実際、事業者数は年間10万者程度のペースで減少しつつあり、足下では358万者まで減少しています。こうした“待ったなし”の課題に対して、早め早めの円滑な事業承継は有効な解決策の一つです。」

 

もっとシビアな見方もあります。

 

『日本政策金融公庫論集』の第47号(2020年5月)には、自分の代で事業をやめる予定である「廃業予定企業」が52.6%、200.2万件に上るとあり、実際に廃業することによる影響として、「従業者数704.3万人、付加価値額25.1兆円、売上高110.3兆円が失われる」との推計を示しています。

 

日本の2020年の実質GDPは529兆円でしたが、中小企業の廃業によってその5%近くが失われることになってしまうのです。

次ページ「後継者がいなくて廃業せざるを得ない会社」の問題

※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

赤字、零細企業でも後継者は必ず見つかる! 経営権を譲渡し、財産権を残す“新しい事業承継の形”とは? 後継者候補探しから承継のスキームまでを徹底解説。 後継者不在で、廃業してしまう会社が日本にはたくさんありま…

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