太陽光発電設備の敷地は「小規模宅地等の特例」の対象
小規模宅地等の特例は、相続税評価額が最大8割減額になる制度ですが、太陽光発電設備の敷地も、小規模宅地等の特例適用の対象になります。ただし、特例適用には要件がありますので、注意点も併せてご説明します。
■小規模宅地等の特例適用になる特定事業用宅地等とは
太陽光発電設備の敷地が、相続税の小規模宅地等の特例対象となるためには、「特定事業用宅地等」の要件に該当する必要があります。特定事業用宅地等の要件は3種類あり、すべての要件を満たさなければなりません。
■事業用の太陽光発電設備の判断基準は電力の出力KW
特定事業用宅地等の要件の一つである事業用は、以下の3つの要素を総合的に判断することになります。
・事業規模
・事業の反復継続性
・事業設備や事業環境
出力50kW以上の太陽電池発電設備は、保安規定の届出が必要となりますので、環境面でも事業用の設備といえます。
一方、自宅の屋根に設置している太陽光パネルは、自家消費がメインなので事業用とはなりません。また、50KW未満の太陽光発電設備の場合には、事業規模の大きさや電力の売却状況などを総合的に判断することが必要です。
■構築物に該当する太陽光発電設備とは
特定事業用宅地等の要件を満たすためには、太陽光発電設備の敷地に建物または構築物があることが条件です。一般的な構築物とは塀や舗装設備などをいい、過去の判例では、以下の要件を満たした構築物が存在しなければなりません。
・事業の目的のために存在すること
・ある程度堅固な施設であること
・容易に撤去ができない構築物であること
太陽光発電設備は機械装置に該当するため、構築物ではありません。ただ、太陽光発電事業を行うために敷地のアスファルト舗装、太陽光パネルを設置する架台の杭打ち、敷地を塀で囲むなどの措置をします。それらの設備等を総合的に判断し、構築物とみなされれば小規模宅地等の特例適用は可能となります。
太陽光発電設備を相続する際の注意点
最後に、太陽光発電設備を相続する際の注意点について説明します。
■太陽光発電設備を相続取得した際は経済産業省への届出書の提出が必要
太陽光発電設備を相続した場合、経済産業省へ届出書の提出が必要です。その際の手続き方法ですが、太陽光発電設備の出力KWによって提出書類が異なりますので、ご注意ください。
■相続税の申告期限は亡くなった日の翌日から10ヵ月以内
相続税の申告・納付期限は、亡くなった日の翌日から10ヵ月以内です。期限内に申告できない場合には、罰金(加算税・延滞税)を支払うことになりますので、相続人間の遺産分割協議が成立していない場合でも、期限内に申告しなければなりません。
なお、申告後に遺産分割協議が成立した場合には、成立した内容に基づき、修正申告、または更正の請求の手続きが必要です。
■税務署は太陽光に関係する申告は積極的に税務調査をする
太陽光発電設備は、田舎の土地など被相続人の生活圏外の地域に設置されていることが多いため、相続税の申告漏れが多い財産です。そのため、税務署は相続財産に太陽光発電設備がないかを徹底的に調べます。
なお、太陽光による電力販売をしている場合、税務署は売上からも太陽光発電設備の存在を確認できますので、税務署は申告漏れをすぐに指摘することができます。
■税務署では相続税の節税方法は教えてくれない
税務署で太陽光発電設備の相続税評価額の相談をしても、計算方法の説明のみで留まり、節税についての説明はしません。
また、相続人だけで相続税評価額の計算をするのにも限界がありますので、節税を考える場合には税理士に依頼することも選択肢です。その際の注意点として、相続税は税理士の中でも専門性が高い税目なので、相続税の知識が薄い税理士に依頼しても効果的な節税は期待できません。そのため、相続税の節税まで考慮する場合には、相続税専門の税理士に依頼することを推奨します。