(※写真はイメージです/PIXTA)

街を歩くとき、お祭りのなかを進むとき、車を走らせるとき……ふと目に付くのは「お店の看板」。実はシチュエーション別に、緻密な戦略が立てられているのです。本記事では、看板製作会社「有限会社オチスタジオ」の代表・越智一治氏が、看板に秘められたマーケティング方法について解説していきます。

「ロードサイドの看板」緻密に計算されつくしていた!

■距離を踏まえて文字サイズを決定

 

3つ目のポイントは視認性です。視認性は、確認できるかどうか、分かりやすいかどうかの度合いです。看板そのものの存在が認識できても、何が書いてあるか分からなければお客さんは呼べません。

 

お客さん目線で街中の看板を見ていると、視認性が悪い、見えづらいと感じるものを見掛けます。

 

例えば、大きな道路沿いには店舗名や店までの道のりを示す野立て看板が設置されています。これらロードサイドの看板は運転している人の注意を引くことが目的ですので、大きめのサイズで作るのが一般的です。

 

看板の文字が読めるかどうかは、文字の大きさ、見る人と看板との距離、見る人の移動スピードなどが関係します。運転中の人とロードサイドの看板を考えてみます。車で移動している人は、視界を遮るものがなければ、だいたい150mくらい先まで見通すことができます。

 

看板の存在に気がついてから看板の横を通り過ぎるまでの時間は、時速50kmで走っている車であれば約10秒、時速30kmで走っている車は約18秒です。運転中の人は、店の150m手前から看板を認識したとして、この10~18秒の間に、入店するかどうかを決定することになります。

 

ロードサイドに店の入り口がある場合は、ウインカーを出したり減速したりする時間が必要になるため、さらに時間が短くなります。看板の存在に気づき、内容を理解し、行ってみようと判断し、ウインカーを出して曲がるといった作業をすべて含めると、看板の内容は3秒くらいで理解ができる分かりやすいものでなくてはなりません。

 

一方、人が認識できる文字の大きさ(文字の縦の長さ。文字高といいます)は、最低でも距離の約500分の1が必要といわれています。そのため、150m手前で文字を認識できるようにするためには、150m÷500=0.3mで、一文字につき縦30cmの大きさが必要ということです。立ち止まって看板を見る場合も、距離が遠くなるほど文字を大きくする必要があります。

 

道路標識を管轄する国土交通省のガイドラインによると、看板との距離と文字の大きさの関係は上の表のように設定されています。英文のほうが文字高が小さいのは、漢字などの和文と比べて画数が少なく、視認性が良いためです。ここで挙げた距離を看板のタイプ別に分けると、次のようになります。

 

・遠距離(30m超)……屋上看板、ビジョン看板、ポール看板、ロードサイドや線路沿いの野立て看板など

 

・遠距離から中距離(30mから20m)……袖看板、自立看板、懸垂幕、横断幕など

 

・中距離から近距離(20mから10m)……LED看板、テント看板、カッティングシートなど

 

・近距離(10mから5m)……ファサード看板(平看板、木看板)、シャッターマーキング、のぼり旗、イベントサインなど

 

・至近距離(5m以内)……スタンド看板(立て看板、置き看板、A型看板)、POP、パネル、メニュー板、フロアマップなど

 

 

越智 一治

有限会社オチスタジオ 代表取締役

※本連載は、越智一治氏の著書『看板マーケティング戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

看板マーケティング戦略

看板マーケティング戦略

越智 一治

幻冬舎メディアコンサルティング

ピーター・ドラッカーは、マーケティングの理想は「販売を不要にすること」であると言いました。 つまり、営業マンが売り込みに走り回らなくても、商品やサービスが「自ずから売れるようにすること」が究極のマーケティングだ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録