(※写真はイメージです/PIXTA)

精神医療における薬物治療は、医師にだけ可能な行為であるために、単に「薬を処方するだけ」となりがちであるのが精神医療の現実です。医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏は「精神科医の対人援助スキルが乏しい」と語ります。この記事では、精神医療の現場における「改善点」を同氏が提案していきます。

精神科は「待たされるのに、診察時間が短すぎる」…

健康保険の枠組みのなかで、臨床心理士の力を借りることなく、一人の精神科医が責任をもって診療のプロセスすべてを担うために編みだしたのが、外来診察を完全予約制にして、予約料を負担してもらうという仕組みです。

 

ご存じのとおり、健康保険の適用となる保険診療と、適用外の自由診療は原則として併用することが認められません。しかし例外として、先進医療などの「評価療養」「患者申出療養」、差額ベッド代などの「選定療養」では、保険診療の範囲には健康保険が使え、それを超える範囲を自由診療で補うという併用が認められています。

 

その選定療養のなかには、予約診療を採用している病院において、患者の希望により予約診療を選んだ場合に患者が支払う「予約料」もその対象に含まれています。予約料のみ自費で負担してもらい、通常の診療の部分は健康保険の対象となるのです。

 

つまり予約料とは、患者を待たせることなく希望した時間どおりに診察をスタートするための努力や仕組み作りに対して徴収が認められている、選定療養の一つということです。

 

当診療モデルでは、通常の保険診療か、予約診療か、患者が選択できる仕組みになっています。この両者を自在に組み合わせた診療モデルは、残念ながら世界的に見てもまだ珍しいのが現状です。

 

この診療モデルのメリットの一つは、通常の診療で請求できる保険点数に加えて、患者から受け取る予約料収入を上乗せできることです。

 

予約は診察スタートの時間を決めるだけではなく、20分、40分、60分のなかから、診察に必要な時間枠を確保して終了時間も定めています。健康保険の枠組みで十分な診察時間を取ろうとすると病院経営が圧迫されてしまうところを、結果的にはこの予約料で補うことができています。

 

もう一つは、一定の診察時間を保証することで、患者が安心して自身の状態について話し、治療について医師と相談することができるという点です。これはボトルネックを発見し、適切な援助を提供するうえで欠かせない要素です。

 

当院では精神科を受診するのは初めてという患者は少なく、ほかの病院をすでに受診していてなんらかの不満をもっている人や、セカンドオピニオンを求めて来院する人が大半です。

次ページありがちな「度重なる通院」と「過剰な処方」を回避

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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