(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件を長期保有しているオーナーは、必ず「大規模修繕」の問題に直面します。物件の価値を維持するために不可欠な工事ですが、相当なコストがかかるため、失敗は絶対に避けたいところです。ここでは、塗装工事と防水工事について、費用対効果の面も踏まえながら、専門家が重要ポイントを解説します。

塗装工事:重要になるのは「カラーシミュレーション」

塗装工事で重要なのはカラーシミュレーションです。カラーシミュレーションとは、コンピューターで色を指定し、施工前の段階で完成に近い形で色合いを確認できるものです。色彩感覚は人によって大きく違いが出るものです。また、物件個別で合う色、合わない色があります。営業マンへヒアリングするため、少なくとも5パターン程度のサンプルを作成してもらいましょう。

 

作成方法は、以下のように四つあります。

 

カラーシミュレーションのメリットとデメリット

①塗装会社に頼む
メリット……費用がかからない
デメリット……シミュレーションのクオリティーが低い場合がある

②塗料メーカーに頼む
メリット…… 費用がかからない。塗料の品番が指定できるので、失敗が少ない
デメリット……小規模だと受け付けてくれない

③カラーコーディネーターに頼む
メリット……色に対するセンスがなくてもよい
デメリット……費用がかかる。物件固有の賃貸需要を無視すると、入居希望者ニーズと一致せず、無駄になる

④自分でコーディネートする
メリット……費用がかからない
デメリット……入居希望者のニーズと一致せず、失敗する可能性が高い

 

特にお薦めしたいのが、②の塗料メーカーが無料でシミュレーションを作成してくれるカラーシミュレーションサービスです。

 

塗料メーカーが作成するため塗料の品番指定ができ、失敗が少なくなります。また、①~④に加え専業のカラーコーディネーターや建築士の方にシミュレーションをお願いする方法もあります。当社では顧問建築士の先生に、物件ごとにシミュレーションを依頼しております。先日も昭和47年築の物件を塗装するため、20パターンのシミュレーションを作成してもらい実施工したところ、シミュレーション通りに仕上がりバリューアップに成功しました。

 

塗装工事の順番としては、「カラーシミュレーション作成 → 仲介会社へのヒアリング(10社程度)→ 色の決定 → 施工」です。

 

また塗装工事と一口に言っても、吹き付け塗装かローラー塗装か、一度塗りか三度塗りか、塗料はどんなものを使うのかによって金額が大きく変わります。その選択は物件の運用方針によって判断します。PM会社は、あくまでオーナーさんの代理という立場ですので、運用方針に沿った施工レベルでのご提案は非常に重要なポイントとなります。

 

では、ここから運用方針による施工方法の違いについてお伝えいたします。大きく分けると短期保有なのか、長期保有なのかという違いです。

 

5~10年程度の短期保有後の取り壊しが前提の塗装工事の場合は、過剰な工事は必要ありません。保有期間中の入居率の低下・雨漏りなどがないレベル(復旧)程度の工事で十分です。

 

当社では塗装コストを抑えるために、5年以内の売却を前提とした場合は一度塗りで対応しています。注意点としては、塗装回数が一度なので元の色に近い色調で施工するということです。なぜなら被膜が薄くなり、下地が見えて汚らしくなってしまうからです。そのため、使える色は限られます。

 

20年程度の長期保有の場合においては、「アップグレード」も視野に入れ工事をします。「アップグレード工事」では色調に幅があり自由に色を選べます。ただし、トレンドに左右されるような色を使用してしまうと年数が経過していくなかで古臭いイメージになってしまいます。入居率低下の原因にもなってしまいますので注意が必要です。長期保有の塗装工事は短期保有に比べ長期的な機能維持が求められますので、塗装回数は三度塗りが望ましいでしょう。

 

「古臭くなったから(薦められたから)塗装しよう」と目先の判断で施工すると「費用対効果」の低い投資になってしまいます。必ずどんな目的で施工するのかを考え、その運用方針に則った施工方法で工事を行うことが重要です。また、塗装の施工提案を行っている管理会社であれば実際の物件の仕上がりを見ることができるため、事前に打診するのもいい方法でしょう。

 

運用方針で変わる塗装工事事例

 

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※本記事は、『空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

[増補改訂版]空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

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大谷 義武,太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

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