(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が、被相続人への多大な貢献を遺産分割に反映させる「寄与分」について解説します。

相続人以外の親族による特別寄与料の請求が可能に

前述の問題点を受ける形で、2018年成立の相続改正法(2019年7月1日に施行)では、相続人以外の親族(被相続人の介護などを担当することが多い相続人の嫁や孫など)が、相続人に対して特別寄与料として金銭の支払いを請求できるようになりました。

 

この特別寄与料の請求については期間制限が設けられていることに注意しましょう。

 

相続の開始と相続人が誰であるか知った時から6か月以内、あるいは、相続開始時から1年以内に請求しなければなりません。

 

特別寄与料の請求が認められるのは、相続人以外の「被相続人の親族」に限定されています。親族とは、6親等内の血族と3親等内の姻族(配偶者の血族のこと)を指します。

 

相続人の嫁=1親等の姻族にあたるので、特別寄与料の請求ができますが、相続人の嫁が婚姻届を提出していない内縁の妻にあたる場合、被相続人の親族にあたらないので特別寄与料の請求はできません。

 

特別寄与料の請求をするには、被相続人に対して無償で療養看護や労働力を提供することで、被相続人の財産の維持や増加に多大な貢献(特別の寄与)をしたことが必要です。

 

どのような場合が特別な寄与にあたるのかは基本的に寄与分の制度と同じように判断されますが、特別寄与料の請求は「無償で」療養看護などをしたことが要件になっていることに注意しましょう。

 

また、特別寄与料の請求をするのは「相続人以外」の親族なので、相続人に参加資格がある遺産分割協議以外の場面で相続人と協議が進まない場合、家庭裁判所に対して相続人との協議に代わる処分を請求することが可能です[図表1]。

 

[図表1]相続人以外の親族による特別寄与料の請求

相続人の不存在を条件とする特別縁故者への財産分与

特別縁故者とは、具体的に「被相続人と生計を同じくしていた者・被相続人の療養看護に努めた者・その他被相続人と特別の縁故があった者」のことをいいます。

 

わかりやすく言うと、被相続人と密接な関係があった人のことを指します。

 

被相続人が死亡した場合に相続人が1人もいなかった場合や、相続人になるはずの人が全員相続権を失っていた場合は相続人の不存在として扱われ、被相続人の財産は国庫に帰属します。

 

しかし、特別縁故者がいるときは、その人に被相続人の財産取得を認めることが被相続人の意思に沿っているものと考えられます。

 

特別縁故者は被相続人と同居していることも多く、特別縁故者に対する相続財産の分与を認めることで被相続人が死亡した後の生活保障を図ることも可能です。

 

そこで、相続人の不存在を条件として特別縁故者に対する財産分与が認められており、相続財産の分与は特別縁故者にあたる人からの申立てを受けて、家庭裁判所の審判によって行われます。

 

具体例として、特別縁故者にあたる人は婚姻届けを提出していない内縁の配偶者・養子縁組を行っていない事実上の養子などが挙げられます。

 

それから、被相続人が自分の看護などでお世話になった友人や医療関係者なども特別縁故者にあたるケースがあります。

 

特別縁故者にあたる者は特別寄与料の請求制度とは違い、被相続人の療養看護などを無償で行った場合に限られないことに注意しましょう。

 

友人や医療関係者などが報酬以上に療養看護などに尽力したと評価された場合、特別縁故者にあたる余地があるのです[図表2]。

 

[図表2]特別縁故者に対する相続財産の分与

 

家庭裁判所は、特別縁故者への相続財産の分与を認めるときは、被相続人の相続財産を生産した後に残っている相続財産全てあるいは一部を特別縁故者に対して与えることができます。

 

■寄与分のまとめ

・寄与分が認められるためには相続人の貢献が被相続人の財産の維持・増加につながったことも大事

・実際に被相続人に貢献した相続人以外の人(相続人の妻や孫)も特別寄与料の請求が可能に

・無償の行いでない場合でも報酬以上に尽力したと評価されれば特別縁故者にあたる

 

 

大槻 卓也

行政書士法人ストレート 代表行政書士

 

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本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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