インド経済の見通し~感染第2波からの経済回復が続くも、オミクロン株の流行が下振れリスクに(2021年度+9.3%、2022年度+7.6%)

インド経済の見通し~感染第2波からの経済回復が続くも、オミクロン株の流行が下振れリスクに(2021年度+9.3%、2022年度+7.6%)
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月7日に公開したレポートを転載したものです。

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経済概況:デルタ株の感染の勢いが弱まり、4期連続のプラス成長を記録

2021年7~9月期の実質GDP成長率は同+8.4%(前期:同+20.1%)と低下したが、デルタ株の感染の波が弱まり経済活動の勢いが増したため4期連続のプラス成長となり、Bloombergが集計した市場予想(同+5.6%)を上回る結果となった(図表1)。

※ 11月30日、インド統計・計画実施省(MOSPI)が2021年7~9月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。

 

[図表1]インドの実質GDP成長率(需要側)
[図表1]インドの実質GDP成長率(需要側)

 

7~9月期の実質GDPを需要項目別にみると、内需は民間消費が同+8.6%(前期:同+19.3%)、総固定資本形成が同+11.0%(前期:同+55.3%)と鈍化した一方、政府消費は同+8.7%(前期:同▲4.8%)とプラスとなった。

 

外需は、輸出が同+19.6%(前期:同+39.1%)、輸入が同+40.6%(前期:同+60.2%)となり、それぞれ大幅な伸びが続いた結果、純輸出の成長率寄与度は▲4.4%ポイント(前期:▲3.6%ポイント)とマイナス幅が拡大した。

 

インドは昨年、新型コロナウイルスの流行に伴いインド政府がウイルス封じ込めを目的に3月下旬に全国で厳格な都市封鎖を実施すると、4~6月期の成長率が前年同期比▲24.4%に急減した。

 

その後、政府が段階的な経済再開を進めたことにより、10~12月期に同+0.5%のプラス成長に回復、今年4~6月期は変異株による感染爆発(感染第2波)が生じ、国内各地では州独自の封鎖措置が敷かれたものの、全土封鎖は実施されなかった。

 

このため、前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)により4~6月期の成長率が同+20.1%に急上昇した。そして、今回発表された7~9月期の成長率は同+8.4%に低下したが、高い伸びを保った。

 

7~9月期の高成長は、活動制限措置が緩和されたことによる影響が大きいとみられる。インドでは、感染第2波が5月上旬に1日当たり40万人もの感染者数を記録して深刻な医療崩壊が生じたが、その後は急速に感染状況が改善したため、政府は6~9月にかけて段階的に活動制限措置の解除を進めた(図表2)。

 

このため、7~9月期は経済活動にかかるブレーキが和らぐこととなり、民間消費と投資が持ち直した。Googleが提供するCOVID-19コミュニティモビリティレポートによると、小売・娯楽関連施設への人流は今年7~9月期の平均が約2割減(コロナ前との対比)となり、引き続き減少したままだが、昨年7~9月期や今年4~6月期の5割減と比べると大きく改善している(図表3)。

 

このように7~9月期の実質GDPは見かけ上、高い伸びを記録した4~6月期と比べて成長率は低下したが、前期比では+10.3%となった。

 

需要項目別に見ると、民間消費(同+8.6%)と総固定資本形成(同+11.0%)、政府消費(同+8.7%)、輸出(同+19.6%)がそれぞれ高い伸びとなった。コロナ禍前(2019年10~12月期)の水準と比べると、民間消費が1割ほど低い水準にとどまっているが、政府消費と総固定資本形成が同水準、輸出が2割ほど高い水準にあり、引き続き世界経済の回復による輸出拡大がインド経済の追い風となっているようだ。

 

[図表2]インドの新規感染者数の推移/[図表3]インドの外出状況
[図表2]インドの新規感染者数の推移/[図表3]インドの外出状況

 

2021年7~9月期の実質GVA成長率は前年同期比+8.5%(前期:同+18.8%)と低下したが、高めの伸びを保った(図表4)。

 

産業部門別に見ると、第一次産業は同+4.5%(前期:同+4.5%)と堅調に拡大した。農業部門はコロナ禍でもプラス成長を続けている。

 

第二次産業は同+6.9%(前期:同+46.1%)と低下した。製造業が同+5.5%(前期:同+49.6%)、建設業が同+7.5%(前期:同+68.3%)、電気・ガスが同+8.9%(前期:同+14.3%)となり、それぞれ伸びが一桁台まで鈍化した。鉱業は同+15.4%と二桁成長が続いた。

 

第三次産業は同+10.2%増(前期:同+11.4%増)と好調を維持、国内各地の活動制限措置が徐々に解除されたことがサービス業の高成長に繋がった。商業・ホテル・運輸・通信が同+8.2%(前期:同+34.3%)、行政・国防が同+17.4%(前期:同+5.8%)、金融・不動産が同+7.8%(前期:同+3.7%増)となり、それぞれ堅調に拡大した。

 

[図表4]インドの実質GVA成長率(産業別)
[図表4]インドの実質GVA成長率(産業別)

 

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