インドネシア経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比+3.51%…成長率は2期連続のプラス成長も、感染再拡大に伴う行動規制強化の影響を受けて減速

インドネシア経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比+3.51%…成長率は2期連続のプラス成長も、感染再拡大に伴う行動規制強化の影響を受けて減速
(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月8日に公開したレポートを転載したものです。

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インドネシア経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比+3.51%

インドネシアの2021年7~9月期の実質GDP成長率※1は前年同期比(原系列)3.51%増(前期:同7.07%増)と低下し、市場予想※2(同+3.88%)を下回る結果となった。

※1 2021年11月5日、インドネシア統計局(BPS)が2021年7~9月期の国内総生産(GDP)を公表した。

※2 Bloomberg調査

 

7~9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の鈍化が成長率低下に繋がった(図表1)。

 

[図表1]インドネシア実質GDP成長率(需要側)
[図表1]インドネシア実質GDP成長率(需要側)

 

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比1.07%増(前期:同5.92%増)と鈍化した。費目別に見ると、前期に二桁増となった輸送・通信(同0.21%減)とホテル・レストラン(同2.48%増)がそれぞれ急低下したほか、食料・飲料(同0.79%増)が鈍化した。一方、住宅設備(同2.29%増)と保健・教育(同2.44%増)はそれぞれ小幅に上昇した。

 

政府消費は前年同期比0.66%増となり、前期の同8.03%増から大きく低下した。

 

総固定資本形成は前年同期比3.74%増(前期:同7.54%増)と鈍化した。機械・設備(同11.54%増)と建設投資(同3.36%増)、自動車(同9.01%増)が揃って低下となった。

 

純輸出は成長率寄与度が+1.23%ポイントとなり、前期の+0.94%ポイントから拡大した。まず財・サービス輸出は前年同期比29.16%増(前期:同31.98%増)と大幅な増加が続いた。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同2.10%増)が鈍化したものの、財輸出(同30.61%増)が高い伸びを維持した。また財・サービス輸入も同30.11%増(前期:同31.72%増)と大きく増加した。

 

供給項目別に見ると、主に第三次産業の鈍化が成長率低下に繋がった(図表2)。

 

[図表2]インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
[図表2]インドネシア 実質GDP成長率(供給側)

 

まず成長を牽引する第三次産業は前年同期比2.18%増(前期:同10.23%増)となり、伸びが鈍化した。内訳を見ると、情報・通信(同5.51%増)と保健衛生・社会事業(同14.06%増)は好調だったものの、構成割合の大きい卸売・小売(同4.24%増)と金融・不動産(同3.92%増)が鈍化、運輸・倉庫(同0.72%減)とホテル・レストラン(同0.13%減)、ビジネスサービス(同0.59%減)、行政・国防(同9.96%減)が減少した。

 

第二次産業は前年同期比4.49%増(前期:同5.84%増)と低下した。内訳を見ると、鉱業(同7.78%増)が好調だったが、構成割合の大きい製造業(同3.68%増)と建設業(同3.84%増)、電気・ガス・水供給業(同3.91%増)が鈍化した。

 

第一次産業は前年同期比1.31%増(前期:同0.43%増)と小幅に上昇した。

 7~9月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は昨年、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に経済活動が停滞して、2020年の成長率が前年比▲2.07%と減少した。感染第1波の長期化によりインドネシア政府が各種行動制限を継続したため経済活動の再開が遅れてマイナス成長が続いていたが、今年4~6月期の実質GDPは実体経済の持ち直しと前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)により+7%成長(前年同期比)に急上昇した。しかしながら、今回発表された7~9月期の実質GDPは同3.51%となり、景気回復ペースが鈍化する結果となった。

 

今回の成長率低下は感染第2波の発生に伴い行動制限措置を強化した影響が大きいとみられる。インドネシアでは6月中旬頃からデルタ株の感染が広がり感染第2波が発生、1日あたりの新規感染者数は7月中旬に5.6万人に達した(図表3)。インドネシア政府は感染再拡大を受けて7月初旬に人口の多いジャワ島と観光地のバリ島に緊急活動制限(PPKMダルラット)を実施し、出社を原則禁止するなど人の移動を大幅に制限した。

 

こうした行動規制によりインドネシアにおける小売・娯楽施設への人流が7月下旬に約2割減少することとなり(図表4)、7~9月期の民間消費は前年同期比+1.07%(4~6月期:同+5.92%)に鈍化した。また4~6月期の成長率を押し上げたベース効果や自動車奢侈税の減免措置による景気押上げ効果が一部剥落したことも7~9月期の成長率低下に繋がったとみられ、総固定資本形成も同+3.74%と、4~6月期の+7.54%から鈍化した。

 

[図表3]インドネシアの新規感染者数の推移
[図表3]インドネシアの新規感染者数の推移

 

[図表4]インドネシアの外出状況
[図表4]インドネシアの外出状況

 

しかし、足元では経済活動が回復してきており、10~12月期の成長率は再び加速しそうだ。活動制限強化による感染対策が奏功して、感染状況は7月から改善に転じ、新規感染者数は9月末にかけて1日1,000人台まで減少、足元でも1日500人前後で落ち着いて推移している。政府は8月から出社制限の緩和や商業施設の営業再開など経済活動の再開を段階的に進めている。

 

またジャカルタ首都圏の感染リスク区分は8月末に最も高い「レベル4」から「レベル3」へ、10月中旬に「レベル2」へ、11月から「レベル1」へと引き下げられている。こうした段階的な行動規制の緩和により購買や生産活動は回復してきているようだ。9月の消費者信頼感指数は72.7で前月から13.4ポイント上昇すると共に、10月の製造業購買担当者指数(PMI)は57.2と、景況改善・悪化の分岐点となる50を2カ月連続で上回った。また輸出も石炭やパーム油の価格高騰が追い風となって拡大している。

 

インドネシア政府は10月に2021年の成長率予測を当初の3.7~4.5%から4%に修正し、感染再拡大による経済への打撃は大きくないとし、経済回復に自信をみせているが、当面は米国とEUのテーパリングや中国経済の減速、世界的な物価上昇といった不確実要素がインドネシア経済の回復を妨げるリスクに注意する必要がありそうだ。

 

 

斉藤 誠

ニッセイ基礎研究所

 

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