(※画像はイメージです/PIXTA)

在宅医療や在宅ケアを考えるとき、「ご本人がどう過ごしたいか」、そして「ご家族がどう支えていきたいか」が大切だといいます。介護で支える家族側の人生も大切にすべきだと在宅医は指摘します。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

介護休業は家族を介護する休みを取る制度

■病状に合わせて介護休業の制度をうまく使う

 

介護をする側にとって大きな助けになるのが、「介護休業」という制度です。

 

介護休業は、労働者が家族を介護するために長期の休みを取得できる制度で、法律できちんと保証されています。介護が必要な家族1人につき、通算93日まで休みをとれます。また最大で3回まで分割して取得することができます。

 

2週間以上つねに介護を必要とする状態であれば、要介護認定を受けている必要もありません。

 

ここで大切なのは、「いつ」介護休業を取得するかということです。

 

もともと、介護休業というのは、原則的に「介護生活をはじめるための段取りを組む」ための準備期間としての休業期間で、自らが、すべての介護(食事の介助やおむつ交換など)を直接担うためにあてる期間ではありません。もし直接的な介護をする期間と考えると、93日という介護休業はあっという間に終わってしまい、「全然足りないじゃないか、仕事を辞めなくちゃできないじゃないか」という結論になってしまいます。

 

もちろん、介護の一部を行うことは問題ないですが、あくまで「これから介護と仕事を両立する上で、できるかぎり無理なく続けるための段取りをする」という時間に当てましょう。たとえば、平日に役所に申請にいったり、デイサービスを見学に行ったり、ケアマネジャーと相談しながら日々のタイムスケジュールを組んだりといったことです。

 

ただし、例外はがん終末期の場合です。がん終末期の場合、介護が必要な状態になってから残された時間には限りがあります。そのため、介護休業の93日を準備期間としてではなく、ご自分が直接介護をする期間にあてるという選択がよいときもあります。

 

もちろんご家族だけで判断するはむずかしいですから、主治医や看護師、病院の相談室などに相談しながら、いちばん有効に活用できる時期を決めるのがよいと思います。

 

■専門家に相談することで、必ず道が開ける

 

この連載では、在宅医療や在宅ケアの選択肢を中心にお話ししていますが、療養生活は自宅がすべてではありませんし、自宅療養が最良の選択とも限りません。いちばん大切なことは、ご本人・ご家族の両方の人生を大切にしながら、一緒に過ごす時間がお互いにとって「いい時間」になることです。

 

「いい時間」と思うポイントも人それぞれです。そのポイントを大切にした過ごし方を考えるとき、ご本人とご家族だけで考えるのではなく、ぜひ周囲の専門家にご相談ください。本やネットからの情報収集だけでは思いつかない解決策があっという間に見つかることもあります。

 

テレビやメディアで介護に起因する悲しい事件などを目にすると、自宅療養の選択そのものが不安になる方もいらっしゃると思います。事実がどうであったかの詳細を知る機会はないので断言はできませんが、誰にも相談できずにご家族だけで悩み、行き詰まってしまった可能性もあると思っています。

 

在宅での療養生活には、医師、看護師、介護士、ケアマネジャーなど、たくさんの専門職がチームで関わります。それぞれの領域のプロが、知恵やアイディアを出し合い、「いい時間」になるよう全力でサポートします。ですから、ご本人とご家族だけで悩む必要は、まったくありません。

 

困ったら相談する。当たり前のことですが、実際はその一歩が踏み出せないこともあるようです。ですが、その相談が本当に大切です。「いい時間」にむけての道が開かれるはずです。

 

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「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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