対中投資の増加とビザ発給制限の緩和
またウォール街も対中投資を大きく増加させている。中国家計が保有する巨額の貯蓄の獲得競争が起きている。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、ブラックロックなど金融機関の中国子会社100%比率認可など中国政府による外資開放が進展している。
9月末時点で、海外投資家が保有する人民元建て株式と債券の総額は1兆ドルを突破したと報道されている。また中国の対外資産負債残高統計によると過去1年間(2020年3Q―2021年2Q)に中国への株式・投信による資金流入は1.2兆ドルと急伸した。
米国の公的年金や大学財団の運用資金は、ベンチャーキャピタル経由で中国の未公開株にも資金を振り向けている模様である。
さらに中国人学生の学費支払いに依存している大学、中国研究者に依存しているハイテク企業などからは、中国人の研究者・留学生ビザ規制緩和の要求が出され、すでに5万件のビザが発給されたと言われている。
議会はいまだ対中強硬姿勢を見せる
これとは裏腹に超党派による米中経済・安全保障調査委員会(USCC)が11月中旬に議会に提出した年次報告書には、経済安全保障に関する厳しい分析がなされ、32分野での強硬策が提案されている。
特に金融分野の規制強化が強調されている。「中国当局は、中国の資本市場を中国共産党の技術開発目標やその他の政策目標に資金を供給する手段として機能させようと、外国の資本やファンドマネジャーに働きかけている」と強調する。
32の新たな提言は、中国企業にリンクした変動持分事業体(VIE)への投資を制限すること、新疆での強制労働を利用している企業や、米国商務省の企業リストや財務省の軍産複合企業に登録されている企業からの調達や投資の有無を開示するよう、証券取引委員会に企業に要求する権限を与えること、米国の公開企業が事業活動のどこかに中国共産党委員会が存在するかどうかを報告することを義務付けることなどである。
また、中国企業が所有するクラウドコンピューティングやデータサービス事業の利用を制限することも提案されている。これが実現すれば米中間の資本の流れが遮断されるほどのインパクトを持つかもしれない。
議会・政権と実業や金融との間で見解の相違が大きくなっているように見える。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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