米国と中国のいびつな関係…「デカップリング」は現実となるか (写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2021年12月3日に公開したレポートを転載したものです。

バイデン政権の対中姿勢…前政権との違い

バイデン政権が発足してから11カ月が過ぎ、対中政策でトランプ政権時とは違った面も目立つようになってきた。民主主義対独裁専制という価値観対立の観点はトランプ政権とは変わらない。しかし外交面で中国を包囲する動きはトランプ政権よりは踏み込んだものとなっている。

 

インド太平洋地域への関与強化は、AUKUS(米英豪による軍事技術共有)、Quad(米日豪印戦略対話)などが相次いで開催され、各種のイニシアティヴが打ち出された。アフガン撤退も中国を睨んだアジア太平洋地域への注力が狙いである。

 

さらにバイデン政権は強制労働に代表される人権問題に力を入れている。3月にUSTRは、新疆ウイグル自治区での人権侵害を最優先課題に挙げ、同自治区産の綿・トマト製品輸入を全面的に停止した。また6月には太陽光パネル関連製品の輸入に一部制限を導入している。

場合によっては「米中協調」の演出も

しかし他方で、対中姿勢が軟化していると見える要素も多い。気候変動、軍事、貿易、安全保障などの分野で協議が再開されている。スコットランドにおけるCOP26での共同宣言、11月16日の米中首脳らによる衝突回避ルールづくりのためのオンライン会談など、協調の場面が増えている。

 

特に意外なのは、中国を排除した国際サプライチェーン(EPN)構築が、看板倒れになりそうな気配である。安全保障上の要請による①輸出管理、②対米投資審査の強化、③政府調達における中国品の排除などは、トランプ政権からの路線を踏襲しているとされている。

 

しかし実際には半導体関連はほとんどデカップリングできていない。EUV(極端紫外線)装置等の最先端機器以外は、エンティティーリストに挙げられた企業への機器輸出の大半が認可されている模様である。

 

WSJは2020年11月から2021年4月の間に米商務省はファーウェイ向け輸出許可610億ドル(認可率69%)、SMIC向け420億ドル(認可率90%)合計1000億ドル以上を許可したと報道している(10月22日付)。

 

 

半導体製造装置の対中輸出が急増している。2021年第1~3四半期の世界半導体製造装置販売額は752.3億ドル、前年比45.5%増であったが、このうち中国は214.5億ドル、前年比56.5%増と平均を上回っている。1~3四半期の中国の世界シェアは29%と韓国26%、台湾24%、日本7%、北米7%を大きく上回り世界最大となっている。

 

米国半導体製造装置業界トップのアプライドマテリアルの2021年度売上額は前年同期比34.1%増の231億ドルであったが、うち75.3億ドル(全体の33%)と最大の仕向先が中国である。

 

このことは米国通関統計による中国へのハイテク製品輸出が2021年1~9月累計で278億ドル、前年比27%増と全体の伸び率16%を大きく上回っていることからも確認できる。

 

図表2は2020年12月時点のSEMI(国際半導体装置材料工業会)による半導体製造装置出荷額の見通しである。中国は2020年世界最大市場になったものの、2021年以降、米国の対中輸出規制から大きく減少するだろうと予想されていた。しかし、実際は世界最高の伸びを続けているのである。

 

 

半導体投資額は将来の半導体生産シェアの先行指標であると見られることから、米国による中国への半導体装置供給容認は、中国のハイテク製品の供給力を一段と強めることになる。

 

「もし米国半導体業界が中国顧客へのアクセスを失ったら、最大1240億ドルの生産が消失し10万人以上の雇用が危機にさらされ、120億ドルのR&D費、130億ドルの設備投資が脅かされる。

 

航空機で中国へのアクセスが失われれば年間510億ドルの売り上げを失う」(バロンズ)・・・等々の業界団体のロビー活動に押されているのであろう。

 

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株式会社武者リサーチ 代表

1949年9月長野県生まれ。
1973年 横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社し、調査部に配属。87年まで企業調査アナリストとして繊維、建設、不動産、自動車、電機・エレクトロニクスを担当。ニューヨーク駐在の大和総研アメリカでチーフアナリスト、大和総研企業調査第二部長を経て、1997年1月ドイツ証券入社し、調査部長兼チーフストラテジスト、2005年副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーに就任。2009年7月株式会社 武者リサーチ設立、現在にいたる。

著者紹介

連載武者リサーチ経済・金融市場分析レポート

本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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