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3四半期連続の増益も伸びは鈍化
財務省が12月1日に公表した法人企業統計によると、21年7~9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比35.1%(4~6月期:同93.9%)と3四半期連続の増加となったが、増益率は前期から大きく縮小した。
製造業が前年比71.0%(4~6月期:同159.4%)、非製造業が前年比17.0%(4~6月期:同64.2%)といずれも4~6月期から伸びが大きく鈍化した。
製造業は、世界的な供給制約に伴う輸出の減速を主因として、売上高の伸びが4~6月期の前年比20.1%から同9.7%へと鈍化したが、売上高経常利益率が20年7~9月期の4.8%から7.4%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、原油高の影響で変動費が7.9%の増加となったが、売上高の伸びがそれを上回ったため、変動費要因はプラスとなった。
非製造業は、個人消費などの国内需要の低迷を反映し、売上高の伸びが前年比6.8%から2.6%へ鈍化したが、売上高経常利益率が20年7~9月期の3.7%から4.2%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。
経常利益(季節調整値)は5四半期ぶりの減少
経常利益を業種別に見ると、製造業は、半導体不足などの供給制約の影響で売上高が減少した輸送用機械が4~6月期の前年比378.8%から同43.1%へと鈍化したほか、食料品(同▲2.3%)、石油・石炭(同▲6.3%)が減少に転じた。
非製造業は、卸売・小売業が緊急事態宣言に伴う売上高の減少を主因として、4~6月期の前年比52.8%から同22.2%へと伸びが大きく鈍化したほか、建設業が前年比▲9.6%と4四半期ぶりの減益となった。また、コロナ禍で赤字が続いていた飲食サービス業は7四半期ぶりに黒字に転換したが、宿泊業は20年1~3月期から7四半期連続、生活関連サービス業は20年4~6月期から6四半期連続の赤字となった。
季節調整済の経常利益は前期比▲7.4%(4~6月期:同0.7%)と5四半期ぶりに減少した。製造業が前期比▲8.2%(4~6月期:同5.8%)と5四半期ぶり、非製造業が前期比▲6.8%(4~6月期:同▲5.8%)と2四半期連続の減少となった。
製造業は世界的な供給制約を背景とした輸出の減速や原油高に伴うコスト増、非製造業は緊急事態宣言長期化に伴う国内需要の低迷が収益の下押し要因となった。
経常利益(季節調整値)は5四半期ぶりの減少となったが、コロナ前(19年10~12月期)の水準は2%程度上回っている。非製造業は宿泊業、飲食サービス業などの対面型サービス業の低迷が続いていることから、コロナ前の水準を10%以上下回っているが、製造業がコロナ前の水準を30%以上上回っている。
なお、21年7~9月期の経常利益の水準(19.2兆円)は、直近のピーク(18年4~6月期の23.6兆円)に比べれば20%近く低い。 21年10~12月期は、緊急事態の解除を受けた個人消費の回復、供給制約の緩和に伴う輸出の持ち直しなどから、企業収益は回復軌道に復帰することが予想される。
ただし、供給制約の長期化、交易条件悪化に伴う企業収益の悪化や家計の実質購買力の低下、新型コロナウイルス感染再拡大に伴う行動制限の強化など、リスク要因は多い。