興奮するのは逆効果…「黙殺」「放置」の倍返し
先輩が「大騒ぎ」のゲームを演じていたと考えると、私がその先輩に「どこが間違っているのか、教えてください」と何度頼んでも、コンピューターの計算用紙を投げて寄こすだけで、無言を貫き、一切話をしなかったこともよく理解できます。
つまり、私が間違いに気づいて、そのプロジェクトが中止になってしまえば、「大騒ぎ」が終了してしまうためなのです。「大騒ぎ」を継続し、なおかつ、だんだん騒ぎを大きくして、自分に注目が集まり続けることが、その先輩の目的なのです。このため、先輩としては、私が間違いに気づくことは具合が悪いのです。
このように、先輩が「大騒ぎ」のゲームを仕掛けてきたと考えると、すべてが説明できます。しかし、間違っていたのは私ではなく先輩のほうでした。
それでは、このような「大騒ぎ」のゲームを仕掛けられたら、どのように対処すればいいのでしょうか?
この「大騒ぎ」のゲームの目的は、騒ぎを起こすことによって、自分に注目を集めることにあります。したがって、仕掛けた人間と口論をしたり、自分も会議を開いて設計内容を説明するといった対抗策をとると、ますます騒ぎが大きくなるばかりですから、相手の思う壺にはまってしまいます。
このため、ゲームを仕掛けられたからといって熱くなったり、興奮したりするのは逆効果になります。すなわち、このゲームでは、あくまで、冷静を保ち、自分の設計を再検討し、間違いないことを確認して、その先輩を無視することが最良の策なのです。
しかし、会社といった閉鎖集団のなかでは、なかなか先輩を無視することはできないのが実情です。
最低限、周りの人に、自分の設計は間違っていないことを告げて、その先輩との接触を極力避けて距離を置いて対処するというのが現実的な方法だと思います。無視されるというのは、騒ぎを大きくしたい先輩から見ると逆の効果になります。
このため、先輩を無視することによって、先輩がさらに騒ぎを大きくする行動をとることが予想されますが、それもすべて黙殺してしまうのです。つまり、「大騒ぎ」のゲームを仕掛けられたならば、大騒ぎとは逆の行動(無視する、放置するなど)をとって対抗すればよいのです。
その結果、大騒ぎの原因が私のミスではなく、先輩自身の計算ミスだとわかった途端、このゲームは終了することになるのです。
~「大騒ぎ」のゲームの対処法~
・大騒ぎとは逆の行動(無視する、放置するなど)をとって対抗する。
・相手が、さらに騒ぎを大きくする行動をとっても、すべて黙殺する。
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永嶋 良一
1955 年大阪市生まれ。
京都大学大学院工学研究科(化学工学専攻)修了。
神戸大学大学院工学研究科(応用化学専攻)にて工学博士の学位取得。
専門は化学プロセス設計。日本企業勤務の後、Samsung グループ子会社で技術顧問に従事。
定年後は技術コンサルタント、心理カウンセラーを実施。
著書は『비즈니스 일본어 문서작성 가이드』(ビジネス日本語文書作成ガイド)(共著、ソウル、Darakwon 社)他。