「間違っている説明会」まで開催…判明した唖然の事実
そのうち、その先輩は、その設備を導入する工場に勝手に出張していって、工場関係者を集めて「永嶋の計算が間違っている」ことを解説する説明会を開いたのです。
ちなみに、私は、その説明会には呼ばれませんでした。
話がここまで大きくなると、さすがに部長も私に「どうなっているのか?」と聞くのですが、私は自分の計算のどこが間違っているのか、さっぱりわからず「わかりません」と答えるしかありませんでした。
話はどんどん大きくなっていきます。ただ、私とその先輩しか設計計算をしていないので、誰もどちらが正しいのかわからない状況が続いていました。
設計計算は複雑で、誰もが簡単にできる内容ではありません。さすがに工場もこれは大変だと騒ぎ出しました。設計の責任者として私には工場に事態を説明する義務がありましたので、私は計算間違いを見つけるために、何日も何日も徹夜を繰り返しました。
計算の前提条件が間違っているのかもしれないと思い、その工場に出かけていって、3日間、一睡もせずに温度や圧力といった前提条件を逐一確認したのですが、そこまでしても、どこが間違っているのか、さっぱりわかりませんでした。
私は疲労困憊(こんぱい)し、肉体的にも精神的にも限界に来ていました。
そんなある日のことです。私はもう何十回目かわかりませんが、いつものように、その先輩に「私の計算のどこが間違っているのか教えてください」と頼みました。すると、先輩は、これも、いつもと同じように、コンピューターの計算結果を印刷した用紙を黙って自分の席から私に投げて寄こしたのです。
私はため息をついてその紙を眺めました。おそらく、3時間ぐらい眺め続けていたと思います。ずっと、同じ用紙を長時間にわたり眺め続けていたために、私は頭がぼんやりし、半分眠ったような状態になってしまいました。
そのときです。
私は、先輩の計算の温度の初期設定条件が1ヵ所、間違っていることに気づいたのです。