3―行動制限緩和の条件~感染拡大の状況にないこと、感染不安の強い女性や高年齢層ほど慎重
1|全体の状況~上位は病床がひっ迫していないことなど感染拡大の状況にないこと
9月の調査では接種証明等を活用して行動制限を緩和していくことについての条件を尋ねたところ、最も多いのは「病床がひっ迫していないこと」(50.1%)であり、次いで「重症者数がおさえられていること」(45.6%)、「新規陽性者数がおさえられていること」(40.1%)が4割台で続き、感染拡大の状況にないことに関する項目が上位にあがる(図表6)。
また、冒頭で述べた通り、経団連では未接種者への差別や偏見につながらないように陰性証明の活用などを提言しているが、「接種義務化や差別の助長につながらないこと」(28.4%)も比較的上位にあがる。
なお、「接種済み証明の有効期限が定まること」は15.0%だが、現時点では政府は「ワクチン・検査パッケージ」の概要等において当面は有効期限を定めない方針を出している。一方で海外の感染拡大状況やワクチン接種による予防効果は時間とともに低下するために、来月から国内でも3回目の接種(ブースター接種)が開始されることなどから、今後の議論における重要な観点の1つと言える。
また、「どのような条件であれ賛成できない」(6.8%)は1割未満であり、その約7割はワクチン接種に対して前向きではない層※が占める。
※ ワクチン接種状況及び意向の問で「まだ予約しておらず、しばらく様子を見てから接種したい」や「まだ予約しておらず、あまり接種したくない」、「まだ予約しておらず、絶対に接種したくない」と選択した層
2|属性別の状況~重篤化リスク・感染不安の違いから男性より女性、高年齢層ほど慎重
属性別に見ると、性別では男女とも全体と同様に上位に「病床がひっ迫していないこと」など感染拡大の状況にないことに関する項目があがる(図表7)。
男女を比べると、「特に条件はない」(男性が女性より+4.1%pt)や「接種率が国民の7割を超える」(+3.4%pt)などを除けば、おおむね女性が男性を上回る。特に「新規陽性者数がおさえられていること」(女性が男性より+12.9%pt)など感染拡大の状況にないことに関する項目では、いずれも女性が男性を10%pt以上上回る。また、「接種義務化や差別の助長につながらないこと」(+8.1%pt)や「陰性証明の取得にかかる費用負担が軽減されること」(+5.5%pt)「行動制限の緩和を停止する場合の条件を明確にすること」(+5.2%pt)など運用面に関する項目でも女性が男性を上回る。
つまり、女性の方が男性より接種証明等を活用して行動制限を緩和していくための条件について慎重に捉えている。この背景には、女性の方が感染に関わる不安が強いことがあげられる。感染に関わる不安について見ると、不安のある割合はいずれも女性が男性を10%pt以上上回り、特に「感染しても適切な治療が受けられない」(女性71.2%、男性50.5%で女性が男性より+20.7%pt)や「感染による世間からの偏見や中傷」(62.0%、43.3%、+18.7%pt)では女性が男性を20%pt前後上回る(図表8)。
年代別に見ると、いずれも全体と同様に上位に「病床がひっ迫していないこと」など感染拡大の状況にないことに関する項目があがる。「特に条件はない」や「どのような条件であれ賛成できない」を除けば、いずれも高年齢層ほど選択割合が高まる傾向があり、20歳代と70~74歳を比べると感染拡大の状況にないことに関する項目では約3割の差が、運用面に関する項目では約1割の差がひらく。
つまり、重篤化リスクの高い高年齢層ほど行動制限緩和の条件について慎重に捉えているが、やはり、背景には感染不安の違いがあるようだ。感染に関わる不安について見ると、不安のある割合は、高年齢層ほど高まる傾向があり、特に「感染しても適切な治療が受けられない」(70~74歳73.1%、20歳代46.5%で70~74歳が20歳代より+26.6%pt)で20%pt以上の差がひらく。
なお、若い年代では「特に条件はない」の選択割合が高い一方、「どのような条件であれ賛成できない」という相反するような項目の選択割合も高い傾向があるが、20歳代及び30歳代で「どのような条件であれ賛成できない」を選択した者のうち約7割はワクチン接種に対して前向きではない層である。よって、若い年代は、全体としては重篤化リスクの低さから行動制限緩和の条件について比較的寛容な態度を取る傾向が強い一方で、少数派だがワクチン接種に消極的で行動制限の緩和を許容しない層も存在する(約1割)。