これまで元気に過ごしていたペットがある日突然発作を起こす……飼い主は「こんなに突然、病気になることがあるのか」と愕然としますが、神経の病気に関しては珍しくないと、獣医師として数々の動物の命と向き合ってきた中村泰治氏はいいます。ペットの命にも関わる脳の疾患として代表的な「てんかん」について、早期発見のためのサインをみていきましょう。

けいれん、発狂、フライバイト…てんかんの様々な症状

てんかんは、脳のどこがてんかん発作を起こしているかによって、非常にさまざまな症状が起こります。最も多い症状は、けいれんです。全身がけいれんして意識を失ってしまうようなケースもあれば、顔の一部だけがピクピクとひきつっているなど、体のごく一部にだけけいれんが起こるケースまでさまざまです。しかし多くの飼い主が、このけいれんによって異常に気づきます。

 

けいれんのほかの症状には、発作的に発狂したようになってしまうこともありますし、いつも大人しい犬が突然、狂暴になるなど、飼い主から見て性格がガラリと変わってしまったように見えることもあります。

 

このほか「フライバイト」と呼ばれる症状もあります。フライバイトとは、「ハエ追い行動」などとも呼ばれる症状です。この症状が出ている犬猫は、何もない空中を見つめてハエなどの小さな虫を嚙むような動作や、追いかけるような動作をします。

 

このような症状が起こる原因としては、視覚をつかさどる脳の後頭葉と呼ばれる部分でてんかん性放電が起こるためと考えられています。また、行動学的な問題との鑑別が重要です。

 

てんかんは慢性的な病気であるため、発作も繰り返し起こるのが特徴です。

5分以上続く発作には要注意…すぐに受診を

てんかんに限ったことではありませんが、神経の病気の特徴として「突然起こることがある」が挙げられます。飼い主からは「こんなに突然、病気になることがあるのか」という質問をよく寄せられますが、神経の病気に関しては、珍しくありません。

 

特に緊急に受診すべきは「5分以上続くけいれん発作」がある場合や、あるいは「1日に5回以上の頻度でけいれん発作」が起こる場合です。1回あたりの発作の時間は短かったとしても、緊急度の高い病気になっている可能性があります。

 

このような頻回な発作、あるいは長時間続く発作などが見られたときは、なるべくすぐに、受診したほうがよいと思います。様子をみると薬では治せないレベルに進行してしまうこともありますし、その場合は命にも関わります。

 

 

中村 泰治

獣医師

 

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※本連載は、中村 泰治氏の著書『もしものためのペット専門医療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

もしものためのペット専門医療

もしものためのペット専門医療

中村 泰治

幻冬舎メディアコンサルティング

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