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高齢化とともに増えるペットの「認知症」
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気になるサイン
・ご飯をあげたのにずっと食べたそうな様子をしている
・昼夜逆転する
・ひたすら吠え続けて鳴きやまない
・飼い主の指示が通らない
・トイレの場所を忘れてしまう
認知症は、脳の病気や障害の影響や、老化によって脳細胞の働きが衰え、認知機能が低下することで、さまざまな問題行動を起こします。ペットの寿命が延びるのに伴い、犬の認知症も増えています。早ければ11歳や12歳頃から発症するケースもあります。
認知症の症状としては、例えばいくらご飯を食べてもずっとお腹がすいたような様子をしている、昼夜逆転してしまう、目的もなくただただうろうろと歩いている、ひたすら吠え続けて止まらないなどがあります。人間の認知症でも徘徊などがありますが、犬の場合もそれと似たような症状が起こります。
認知症の場合、認知症になっている犬自体がつらい思いをするというよりは、飼い主の負担が大きいです。例えば、犬がずっと鳴き止まない、夜中でもひたすら吠え続けるなどの症状が起こると、飼い主自身が寝不足になってしまいますし、近所迷惑にもなってしまいます。
また飼い主の指示が通らない、学習したことを忘れてしまう、トイレの場所が分からず、トイレ以外でおしっこをしてしまうなども飼い主を困らせる行動です。
チェックリストで認知症の診断を
認知症だと診断するには、チェックリストが用いられます。いくつか種類がありますが、例えば次のようなチェックリストがあります。
・食欲、下痢……食欲の有無や下痢の有無
・生活リズム……昼夜逆転の有無、昼間活発に活動し夜はきちんと眠れているかなど
・後退行動………狭いところに入った後に、方向転換して出てくることができるかどうか
・歩行行動………ふらふらと歩いているか、旋回行動があるかなど
・排泄状態………正常か所構わず排泄するか、失禁するかなど
・感覚器の異常…視力や聴力に異常があるかどうか
・姿勢……………姿勢が正常か、バランスが取れているかなど
・鳴き声…………鳴き声が正常か、飼い主が制止すれば抑制できるかどうかなど
・感情表現………他人や動物に対して反応するかどうかなど
・習慣行動………過去に学習した習慣を行うことができるかなど
飼い主にこうしたチェックリストに沿ってチェックしてもらい、それを点数化し、診断します。
このほかMRIなどによって脳の萎縮を確認することも診断につながります。
リハビリテーション…認知症の進行予防に効果大
認知症の場合は根本的に治すというのは困難です。そのため、なるべく進行を遅らせることを目的とした対処が行われます。人間のアルツハイマー型認知症にも使われている治療薬を用いることもあります。成分は人間の薬と同じで、犬用に推奨されている用量があるため、それに従って投与します。
薬物療法に加えて、サプリメントなどを使用した栄養療法を行うこともあります。具体的には、脳に良いといわれている抗酸化物質のサプリメントなどが用いられることがあります。また、てんかんの項目で述べた食事も有効といわれています。
薬物治療以外には生活面でも気をつけることによって、症状の緩和や進行の抑制などが期待できます。
例えば、ペットの性格にもよりますが、積極的に外に連れ出して日光を浴びさせてあげる、あるいは様々な刺激に触れさせることは、進行予防になる可能性があります。これはまだエビデンスが示されているわけではありませんが、認知症のペットを多く診察するなかで、外に連れ出して外部の刺激に触れさせることは効果的だと感じています。
このほかリハビリテーションも認知症の進行予防に効果が期待できます。昼夜逆転は、日中の運動量が足りずに夜眠れなくなってしまうことも原因の一つだからです。そのようなときはリハビリテーションに通い、安全な環境で十分に体を動かせるようにしてあげることで夜ぐっすり眠れるようになることがあります。
ペットが認知症になると飼い主が介護をしなければならず、負担が大きくなります。最近は少しずつ、高齢のペットを日中預かってくれる、デイサービスのような施設も出てきました。必要に応じてそのような施設も活用するのもお勧めです。
中村 泰治
獣医師
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