実際、どちらのほうがメリットが大きいのか?
▼企業型確定拠出年金の特徴③年金資産の状況が見える化される
確定給付企業年金では、加入者の年金資産の管理・運用は会社、または年金基金がまとめて行います。そして、掛金の納付、資産運用などの状況について、加入者等への情報開示が行われます。
しかし、加入者が自分で管理をするわけではなく、また、必要な拠出額の計算方法が複雑であることなどから、加入者が自分の年金資産の状況を理解することは一般的には困難です。
一方、企業型確定拠出年金では、加入者自身が個人個人の年金資産を管理するため、掛金納付状況や、運用状況は完全に見える化されます。また、リスク・期待リターンの異なる複数の運用対象商品を選択して組み合わせることで、運用内容を加入者本人がコントロールできます。そこから、将来の生活設計に対する意識も高まる傾向があり、就労意識への好影響もあります。
▼企業型確定拠出年金の特徴④ポータビリティがある(持ち運びができる)
確定給付企業年金は、いつでも解約することが可能であるため、加入者が中途で退職した場合は、その時点で退職一時金の給付を受けることができます。
一方、企業型確定拠出年金は、原則として60歳まで受給することができません。その代わり、中途退職などをした場合、転職先の会社に企業型確定拠出年金制度があれば、その会社の企業型確定拠出年金に資産を引き継ぐことができます。
また、転職先に企業型確定拠出年金がない場合や自営業者になる場合などは、個人型確定拠出年金に引き継ぐことも可能です。
▼企業型確定拠出年金の特徴⑤運営コストが低い
確定給付企業年金では、全従業員の年金資産の管理・運用、また将来の給付を会社が行わなければなりません。そのためには担当者の人件費を含め、一定の運営事務コストがかかります。
企業型確定拠出年金では、加入者の入退社管理や掛金額変更等の事務負担は支援企業に伝達するだけです。また、運営管理手数料等の費用は発生します。しかし、確定給付企業年金の資産を管理・運用することに比べると一般的には運営コストは低くなります。
▼企業型確定拠出年金の特徴⑥企業の実態に応じた制度設計が可能
企業型確定拠出年金には、4パターンの加入形態があり(運営管理機関による)、企業の実状に応じて柔軟な制度設計が可能です。
これらの特徴より、特に規模が小さい(従業員が100人程度まで)の会社においては、確定給付企業年金よりも、企業型確定拠出年金のほうがメリットは大きいと考えられます。実際に従業員が30~99人の中小企業では、退職年金に占める企業型確定拠出年金の割合が高くなっていることがそれを示しています。