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クロアチア:格上げ、23年にユーロ導入にこぎつけられる可能性が高まったことを評価
格付け会社のフィッチ・レーティングスは2021年11月12日に、クロアチアの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBB-からBBBへ格上げしました。見通しは強含み(ポジティブ)としています。
フィッチがクロアチアを格上げした背景は、クロアチアはコロナ禍にあってもユーロへの加盟条件や、加盟に求められる構造改革に進展があったことから2023年1月にユーロ圏に加盟する可能性が高いと判断したためです。
どこに注目すべきか:ユーロ導入、マーストリヒト基準、EU拡大
クロアチアが格上げされました。格上げの主な理由はクロアチアが早ければ23年に、欧州連合(EU)共通通貨であるユーロを導入する可能性が高まったからです。ユーロ導入に求められる経済や財政指標への収斂(しゅうれん)は信用力にプラスと説明しています。英国のEU離脱やコロナ禍で忘れられていたEU拡大のきっかけとなるのか、今後の動向が注目されます。
最初に、EUや、ユーロを簡単に振り返ります。EU創設の基となるマーストリヒト条約ではEUの目的として国境のない地域の創設や、経済通貨統合、共通での外交、安全保障などが示されています。欧州の国でまとまっていこうということで、英国が離脱したことで現在のEUは27ヵ国となっています。なお、離脱した英国とは反対に、最近になってEUに加入したのはクロアチアです。
EU加盟国の中でも共通通貨としてユーロを法定通貨として導入したのがユーロ加盟もしくは導入国で現在19ヵ国です。ユーロ導入国はEUの理念である欧州共通化のフロントランナーと位置づけられます。他のEU加盟国は経済条件などからユーロ導入を準備している段階です。
ユーロ導入には経済指標から財政まで様々な条件が求められますが、EU加盟国がユーロを導入するにはマーストリヒト基準に定められた4つの条件①物価、②財政、③為替レート、④金利、の安定が求められます。例えば為替レートは基準レートに対し2年間±15%以内にすることが求められています。クロアチアの通貨クーナは対ユーロで上下2%以内で推移しており問題はなさそうです(図表1参照)。
④の金利も問題はなさそうですが、①の物価はクロアチアのインフレ率が9月に3.3%を越えたときは不安の声もあったようですが(図表2参照)、幸いにも(?)ユーロ圏のインフレ率も上昇したため相対的に安定が続いています。
②の財政は杓子定規ならば懸念はあります。クロアチアの債務残高対GDP(国内総生産)比率は昨年87.3%と高水準だからです(債務懸念が高い)。しかし、債務はコロナ禍でつみあがったもので、クロアチアはコロナ前は健全な財政運営であったため、問題にならないと見られます。9月に公表されたクロアチアとEUとのユーロ導入検討の声明でも、23年からのユーロ導入に自信が示されています。なお、クロアチアは東欧でも有数の観光地でユーロ圏からの観光客も多いことからユーロ導入はこの点でもメリットがありそうです。
クロアチアとは異なり、同地域の他の国を見ると風向きが異なります。EUは英国がEUを離脱した後、バルカン半島周辺の6ヵ国(セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、コソボ、アルバニア)にEU加盟を促し、EU拡大を目論んでいます。しかしながら、政治体制の改革など加盟のハードルは高いと見られます。EU首脳は先月これら6ヵ国のEU加盟を「確約」しましたが期限は定めないとされており、今後の動向は平坦ではなさそうです。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『クロアチアにユーロ導入の予感』を参照)。
(2021年11月17日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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