FF金利先物と投機筋ポジションが示唆するドル円相場の方向性 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドル円はFOMC後112円台をつけたが米10月CPIを受け早期利上げ観測から114円台を回復。

●FF金利先物市場は物価高止まり長期化を想定し2022年に2回以上の利上げを織り込み済み。

●米物価の伸びが鈍化ならいったんドル安・円高へ、その後は米利上げをにらみ再びドル高・円安に。

ドル円はFOMC後112円台をつけたが米10月CPIを受け早期利上げ観測から114円台を回復

最近のドル円の動きを振り返ると、10月20日に一時1ドル=114円70銭水準をつけ、年初来のドル高値(円安値)を更新していました。その後は11月3日に、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、利上げは時期尚早との見解を示したことから、次第にドル売り・円買いが優勢となり、11月9日には112円73銭水準までドル安・円高が進行しました。

 

しかしながら、11月10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年同月比6.2%となり、1990年11月以来、約31年ぶりに6%台に達しました。上昇率は9月の5.4%から加速し、6ヵ月連続で5%以上の伸びとなりました。これを受け、市場では、FRBが早期利上げに動くのではないかとの思惑が強まり、ドル円は再びドル高・円安方向の動きを強め、足元では114円前後での推移が続いています。

FF金利先物市場は物価高止まり長期化を想定し2022年に2回以上の利上げを織り込み済み

このように、直近のドル円相場は、米利上げの見通しに左右されやすい状況にあると推測されます。そこで、FF金利先物市場が織り込む2022年の米利上げ回数(0.25%の利上げ回数)について、11月以降の推移を確認してみます(図表1)。11月3日のパウエル議長の記者会見後、利上げ回数の織り込みは2回を下回り、それに伴ってドル円がドル安・円高方向に振れていることが分かります。

 

(注)データは2021年11月1日から15日。2022年の米利上げ回数はFF金利先物市場が織り込む回数。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]米利上げの織り込みとドル円相場 (注)データは2021年11月1日から15日。2022年の米利上げ回数はFF金利先物市場が織り込む回数。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

その後、11月10日のCPI発表を受け、米利上げ回数の織り込みが2.5回程度まで進むと、ドル円はドル高・円安方向に転じています。なお、先日のFOMCでは、物価の高止まりは一時的との見解が改めて示され、また、パウエル議長の発言から、利上げ時期は2022年後半辺りを念頭に置いている様子がうかがえました。ただ、市場は物価の高止まりは長期化するとみている模様で、2022年に2回以上の利上げをすでに織り込んでいます。

米物価の伸びが鈍化ならいったんドル安・円高へ、その後は米利上げをにらみ再びドル高・円安に

また、11月15日時点で、FF金利先物市場が織り込む2023年の米利上げ回数は、約3.4回となっており、この先2年程度で約6回の織り込みが完了していることになります。また、通貨先物の投機筋ポジションも、かなり円売りが積み上がっています(図表2)。そのため、ここから一段と米国の物価が上昇する動きが確認されない限り、更なるドル高・円安の進行余地は、短期的には限定されつつあると思われます。

 

(注)データは2016年6月7日から2021年11月9日。通貨先物とはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の1部門であるインターナショナル・マネー・マーケット(IMM)に上場されている金融商品で、投機筋のポジションとは非商業部門の買いと売りのネット建玉枚数を指す。1枚=1,250万円。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]通貨先物取引における投機筋の円ポジション (注)データは2016年6月7日から2021年11月9日。通貨先物とはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の1部門であるインターナショナル・マネー・マーケット(IMM)に上場されている金融商品で、投機筋のポジションとは非商業部門の買いと売りのネット建玉枚数を指す。1枚=1,250万円。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

弊社は、FRBと同様、米国の物価は来年以降、伸び率は鈍化すると見込んでいます。実際にそうなれば、FF金利先物市場が織り込む利上げ回数は下方修正され、ドル円はドル安・円高に振れると思われますが、利上げ観測が消滅する訳ではないため、110円程度が目安と考えます。なお、弊社は2022年10-12月期に米利上げ開始を想定しており、ドル円は利上げ時期に近づくにつれ、再び緩やかなドル高・円安基調を回復していくとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FF金利先物と投機筋ポジションが示唆するドル円相場の方向性』を参照)。

 

(2021年11月16日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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