●4-9月期は途中経過の状況と変わらず大幅な増収増益に、コロナによる業績低迷の反動が継続。
●企業は2021年度の業績について増収増益の着地を予想、ただ市場が期待する水準には届かず。
●サプライチェーンの混乱収束などが確認される状況となれば日本株の上昇余地は拡大する見通し。
4-9月期は途中経過の状況と変わらず大幅な増収増益に、コロナによる業績低迷の反動が継続
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、11月16日時点までに4-9月期の決算発表を終えた企業は1,300社を超えました。企業数ベースの進捗率は99%台に達し、決算発表はほぼ終了しました。そこで、今回のレポートでは、集計データに基づき4-9月期決算を総括し、現時点で市場は決算の結果をどう受け止めたか、検証します。
2021年4-9月期の実績は、前年同期比で売上高は15.7%増、営業利益は101.8%増、経常利益は117.5%増、純利益は167.1%増と、11月9日付レポートでお伝えした途中経過から変わらず、大幅な増収増益となりました。コロナの影響で業績が低迷した前年からの反動が4-6月期以降も続いているとみられ、製造業・非製造業の区分では、製造業の業績がよりしっかりと回復しています(図表1)。
企業は2021年度の業績について増収増益の着地を予想、ただ市場が期待する水準には届かず
次に、企業による2021年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は7.8%増、営業利益は35.1%増、経常利益は36.1%増、純利益は64.4%増という見通しが示されました(図表2)。業績予想の改定率は、順に+2.1%、+6.5%、+12.5%、+18.0%で、全体として上方修正の動きが確認されます。
11月9日付レポート『2021年4-9月期決算の途中経過と株価の反応』での途中経過に比べると、2021年度の業績予想については、増収増益の度合いが強まり、改定率も上昇しました。ただ、市場の予想値と企業の予想値との乖離率をみると、売上高は-0.1%、営業利益は-4.8%、経常利益は-5.0%、純利益は-4.4%となっており、途中経過の時点から乖離は若干縮小したものの、依然として市場が期待する水準には達していません。
サプライチェーンの混乱収束などが確認される状況となれば日本株の上昇余地は拡大する見通し
進捗率については、売上高が48.5%、営業利益は54.6%、経常利益は58.7%、純利益は61.5%となり、利益については4-9月期の目安となる50%を上回りました(図表1)。以上より、2021年4-9月期決算は、総じて良好な内容と判断されますが、株価の動きはやや控えめで、決算発表が本格化する前の10月22日から11月17日までの期間、日経平均株価は3.1%の上昇、TOPIXは1.8%の上昇にとどまっています。
今回の決算では、サプライチェーン(供給網)の混乱が業績に影響したとする企業も多くみられたため、混乱長期化のリスクシナリオへの警戒が一定程度、株価の重しになっていると推測されます。今後は、①サプライチェーンの混乱収束、②資源価格の上昇一服、③インフレ懸念の後退、が確認される状況になれば、日本株の上昇余地は拡大する公算が大きいと考えています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4-9月期決算の総括と市場の受け止め』を参照)。
(2021年11月18日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト