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「11/9~11/15のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・5日の米雇用統計発表は予想より良い結果だったものの、米金利は低下、それに連れて米ドル/円も反落となった。これは米金利の短期的「上がり過ぎ」反動が主因か。
・米雇用統計発表をきっかけに、米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正が本格化し、米ドル高、円安が「サイクル・トップ」を付けるパターンは今年2回あったが、今回もその可能性がある。
「予想より良い雇用統計」でも米金利低下のワケ
注目された5日の米10月雇用統計発表では、NFP(非農業部門雇用者数)や失業率など、全般的に事前予想を上回る結果となったものの、米ドル/円は113円台前半へ反落となりました。
高い相関関係が続いている日米2年債利回り差米ドル優位が縮小したことに連れた結果といえるでしょう(図表1参照)。
日米2年債利回り差米ドル優位が縮小した主因は、米2年債利回りの低下です(図表2参照)。では、なぜ雇用統計が予想より良かったにもかかわらず、米金利は低下したのでしょうか。
それは、短期的な「上がり過ぎ」の反動が主因だと考えられます。
米2年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、最近にかけて、一時プラス90%まで拡大しました。これは、米2年債利回りが短期的に異常なまでの「上がり過ぎ」になっている可能性を示しています(図表3参照)。
以上のように見ると、注目の雇用統計が予想より良かったにもかかわらず、米2年債利回りが低下となったのは、短期的な「上がり過ぎ」の反動と考えることで辻褄が合うのです。
「6月米雇用統計発表時」との類似点
ちなみに、7月初めの米雇用統計発表の場面でも、よく似た場面がありました。当時、米2年債利回りの90日MAからのかい離率はプラス60%まで拡大し、やはり短期的な「上がり過ぎ」が懸念される状況となっていたのです。
こういったなかで発表された米6月雇用統計は、予想より良かったのですが、やはり米2年債利回りは低下に向かったことから、米ドル/円も反落となりました。結果的にこれは、米ドル高・円安が循環的なピーク、いわゆる「サイクル・トップ」となった場面での出来事でした(図表4参照)。
今年、もう一つの円安「サイクル・トップ」を付けた場面は、4月初めの米雇用統計発表前後のタイミングでしたが、じつはこの時も似た構図が見られていました。
ただ、一つ違ったのは、短期的な「上がり過ぎ」が懸念されていたのは米2年債利回りではなく米10年債利回りだったということ。
このときに発表された米3月雇用統計は事前予想より良かったものの、米10年債利回りは低下、その中でそれまで米10年債利回り急騰に追随する形で展開してきた急ピッチの米ドル高・円安も反転、結果的には「サイクル・トップ」を付けることになりました。
米金利の短期的な「上がり過ぎ」が、米雇用統計発表のタイミングをきっかけに「行き過ぎ」修正が本格化することで、米ドル高・円安も反転し「サイクル・トップ」を付けるというパターンを参考にすると、今回も米ドル高・円安が「サイクル・トップ」となる可能性があります。
少し細かく米ドル/円のチャートを見ると、10月中旬から約3週間、終値ベースでは113.5~114.5円のレンジでの推移が続いてきましたが、先週末はそれを僅かに下回っての引けとなりました(図表5参照)。
その意味では、米ドル/円はレンジ下放れの可能性が出てきたと見ることもできます。
週末、米2年債利回りが大幅低下したワケ
米2年債利回りは、先週は一時0.5%まで上昇しましたが、週末は0.4%まで大きく低下しました。筆者は、短期的な「上がり過ぎ」の反動が主因だと考えていますが、それに加えて、先週広がった世界的な金利低下が低下を後押しした可能性があります。
4日のBOE(イングランド銀行)の金融政策会合で、事前に予想された利上げが見送られ、その上でBOE総裁が「最近の大幅な利上げ予想に対して強く警告する」として、金利上昇「行き過ぎ」の可能性をけん制したことをきっかけに、英金利にとどまらず世界的に金利低下が広がるところとなりました。
このところハイペースでの物価上昇が続くなかで、インフレへの懸念から金融緩和政策の転換を前倒しに動く傾向が目立っています。これを織り込む形で、市場金利の上昇も続いてきたわけですが、後者に先走りの懸念があったことが、BOE会合などをきっかけに修正に向かったと考えられるのです。
米金利「上がり過ぎ」修正を後押しすることで、当面米金利は低下に向かう可能性が高いでしょう。そんな米金利に追随する形で、米ドル/円も当面、反落リスクが試される可能性がありそうです。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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