オーストラリア中銀、利上げとYCC撤廃は別か? (※写真はイメージです/PIXTA)

豪中銀が今回の理事会で利回り曲線操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)政策を変更すると市場は想定していました。対象となる豪3年国債利回りが誘導目標を大幅に上回っても、豪中銀が利回り水準を修正しなかったからです。注目すべきは長期的に据置くとする政策金利の引き上げ時期です。声明文からは利上げの方針は明確ではなく、今後の確認が必要です。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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豪中央銀行:政策金利などは据置くも、イールドカーブコントロールの停止を示唆

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2021年11月2日の理事会で、政策金利を過去最低の0.1%に据え置くと決定しました。また国債と州債の購入(QE)についても少なくとも2022年2月半ばまで継続するとの方針を維持しました。

 

一方、豪中銀は声明文で20年3月に導入した利回り曲線操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を継続しないと述べています。残存期間3年の国債利回りを政策金利と同水準に抑える政策で、0.1%が誘導目標となっていましたが、足元の水準はこれを大幅に上回っています。

どこに注目すべきか:オーストラリア、YCC、トリム平均、豪ドル

豪中銀が今回の理事会で利回り曲線操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)政策を変更すると市場は想定していました。対象となる豪3年国債利回りが誘導目標を大幅に上回っても、豪中銀が利回り水準を修正しなかったからです(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年11月1日~2021年11月1日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]豪国債利回り(3年、10年)と豪ドル(対米ドル)の推移 日次、期間:2020年11月1日~2021年11月1日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

注目すべきは長期的に据置くとする政策金利の引き上げ時期です。声明文からは利上げの方針は明確ではなく、今後の確認が必要です。

 

金融政策を述べる前に、豪経済の現状を振り返ります。まず、10月27日に発表された7-9月期の消費者物価指数(CPI)は前年比で3.0%と前月から減速しましたが、豪中銀のインフレ目標(2%~3%)の観点からは高い水準です(図表2参照)。

 

四半期、期間:2016年7-9月期~2021年7-9月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]豪消費者物価指数(CPI)の推移 四半期、期間:2016年7-9月期~2021年7-9月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

豪中銀は事実上のコアCPIとして注目しているトリム平均は同2.1%と前月の1.6%から大幅に上昇しました。変動の大きい項目を除外して算出するトリム平均の上昇は市場でも注目され、豪10年国債利回りは急上昇(価格は下落)しました。また、9月の豪失業率が4.6%と低水準を維持し雇用市場も回復傾向となる中、10月末に発表された9月の小売売上高は前月比1.3%と、市場予想、前月を共に大幅に上回りました。

 

豪中銀の経済予想は来年の成長率を5.5%、23年は反動で減速を想定するも、それでも2.5%と堅調な数字を想定しています。もっとも、豪中銀のロウ総裁は豪経済の改善は認めつつも、足元のインフレ率上昇が持続的なのかそれとも一過性かについて明確ではないようです。

 

次に金融政策を振り返ると、豪中銀のロウ総裁は会見でYCCについて有効性が低下したとして利回り目標を撤廃しました。また、YCCを再開する考えがないと述べています。

 

次に、QEについては将来の憶測を語らないとして今回の会見では今後の展開は示されませんでした。

 

最後に豪中銀の利上げ時期については不確実性が若干高まりました。従来豪中銀は24年まで利上げはありそうにないと緩和的な姿勢でした。しかし市場では足元の豪経済の改善や、YCC変更観測から、利上げ時期の前倒しが想定されていました。今回の理事会後、市場では利回り低下、豪ドル安で反応したのは、ロウ総裁が利上げの前倒しに積極的でないと判断したことが背景と思われます。

 

なお、前回の声明文では利上げは2024年以前にはありそうもないという表現を今回の声明文では取り除きました。この部分だけ捉えると、利上げの準備とも見えます。しかしロウ総裁は会見で利上げの時期は24年かもしれないし、23年かもしれない、と煙に巻いた表現をしました。

 

(恐らく)理由は時期の特定よりも将来のインフレ率次第で政策を決めるスタンスにシフトしたからと思われます。豪中銀のインフレ予想は23年まで2%台前半での推移と、インフレ率の今後の展開について、現段階では確信がないようです。豪中銀が今回、YCC撤廃で正常化への方向は示すも、それ以上の引締めを今回は急がなかった背景と見られます。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『オーストラリア中銀、利上げとYCC撤廃は別か?』を参照)。

 

(2021年11月2日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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