優先すべきは「物件選び」ではなく「不動産会社選び」
公務員にとって最強の投資対象は不動産です。その理由は、公務員が金融機関からの信
頼度が最も高い属性を有しているからです。ところが公務員なら誰でもその属性を生かせるとはいえません。なぜなら、その属性を生かすも殺すも、物件を仲介または販売する不動産会社の質にかかっているからです。
物件購入を検討する際は、まずインターネットで個々の物件情報を検索し、その物件を
取り扱っている不動産会社へ問い合わせをするケースが多いようです。しかし、この方法では本当に自分に向いた物件を見つけるのは難しいでしょう。
「駅前」で「閑静な住宅地」といった戸建住宅として人気と思われる立地条件と、投資対象である賃貸物件として成功する立地条件は異なります。また、不動産投資は、20年・30年先を見越した長いスパンで検討しなければなりません。素人が単独で計画を進めるのは、非常にリスキーです。
だからこそ、最初は物件選びからスタートするのではなく、相談相手となる不動産会社選びからするべきです。不動産会社は、人生を左右するほどの投資を二人三脚で行っていくパートナーといえます。では、いったいどのような不動産会社なら信頼できるパートナーとなり得るのでしょうか。
まず、最初に頭に浮かぶのがテレビコマーシャルなどでお馴染みの大手不動産会社でしょう。多くの店舗が駅前にあるので、気軽に入りやすいというメリットもあります。ところが、このような大手不動産会社からは、本当にお買い得な物件の情報はなかなか入手できません。
物件の売却を希望するオーナーが一般人だった場合、多くが不動産会社へ仲介を依頼することになります。仲介には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類の契約形式があります。
大手不動産会社から「お得な物件情報」が出にくい理由
このうち後者2種類は、不動産流通標準情報システム(通称レインズ=REINS)という、国土交通大臣から指定を受けた公益財団法人不動産流通機構が運営しているコンピューター・ネットワーク・システムに仲介物件の情報を登録しなければなりません。つまり、全国の業者がネットワークを介して同じ物件を購入希望者へ紹介できるのです。
ところが大手の場合、他社が売り主と仲介契約を結んだレインズの情報をなかなか紹介
しない傾向があります。それは、仲介手数料が売り主側と買い主側の両方から支払われる仕組みがあるためです。手数料の上限は物件代金の3%+6万円。7000万円の物件なら261万円です。
この金額は売り主と買い主の両方がそれぞれ支払うことになります。つまり、売り主を仲介する不動産会社は自社で買い主も見つけてくれればプラス261万円の合計522万円の収入となるのです。この両方から手数料を受け取ることを業界用語で「両手」、片方から受け取ることを「片手」といいます。
大手は、この「両手」を狙う傾向があります。自社で仲介契約を結んだ物件を優先的に買い主へ紹介するのです。そのネームバリューである程度の数の仲介契約を確保しているから可能なのでしょう。とはいえ、買い主としては情報を選別されていることによって希望の物件を入手するチャンスを奪われていることになります。
また、多くの大手は、たとえ売り主が売り急いでいる物件でも、自社で買い取ることはしません。まずは、現金で買い取ってくれる同業の不動産会社へ話を持っていきます。これはリスクを冒さずに手堅く仲介手数料を得るためです。そのため、話を持っていく先は、すぐにローンが通るかどうかわからない一般の人ではないのです。
売り急いでいる物件は、投げ売り価格になりがちです。したがって、大手に行ってもお買い得な物件情報は、なかなか素人には回ってこないということになります。残るは中小の不動産会社となります。最近は、中小と一口にいっても昔から駅前の路面店で営業しているところからインターネットを活用してマンションの一室で営業しているところまで多種多様な形態がありま
私はどのような形態でも構わないと思いますが、とにかくできる限り地域に根付いている業者を選ぶべきだと考えています。
【図版】 両手仲介の仕組み