自動車業界 「半導体ショック」への対応力で明暗 (※画像はイメージです/PIXTA)

「半導体ショック」によって自動車メーカー大手が相次いで減産計画を発表する中、電気自動車大手のテスラは21年7-9月期決算で過去最多の販売台数を発表した。この明暗を分けたものは、①半導体の代替品活用、②製造拠点数、③生産台数の違いであり、上場来高値を更新したテスラ株の原動力となった可能性がある。

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主要自動車メーカーは減産計画を相次いで発表

世界的な半導体不足や新型コロナ感染拡大に伴う東南アジアでの生産休止、主要港湾における物流停滞等によって、主要自動車メーカーは減産を余儀なくされている。国内自動車メーカーでは、トヨタが通年の生産計画を930万台から900万台程度に引き下げたほか、ホンダは今年度の世界販売台数を500万台から485万台へ下方修正、日産も10-11月の世界販売台数を計画から約3割減少させることを発表した。

 

また、海外自動車メーカーでは、GMが北米8工場で生産を1-4週間休止させる計画を明らかにしたほか、ステランティスもイタリア最大の工場で10月の生産体制を実質6日間程度に短縮させる。

 

この減産の主な要因とされる半導体不足は今に始まったことではない。自動車メーカー各社は昨年のコロナ禍によって使用する半導体の発注を「ジャスト・イン・タイム」の生産方式に沿ってキャンセルしたものの、その後は自動車需要が急回復したことから半導体が一気に不足する状態となった。

 

また、今年2月には米国テキサス州を大寒波が襲いNXPやインフィニオンの工場が稼動停止に追い込まれたほか、今年3月にはルネサスの那珂工場で火災が発生したことも半導体不足に追い討ちをかけた。

 

さらに、半導体受託製造会社が生産能力を自動車以外で使用する最先端の半導体へシフトさせたことも、半導体不足を長期化させる要因となった。世界的に経済が正常化に向かう過程で発生した「半導体ショック」は、自動車メーカーの生産計画を大いに狂わせた。

テスラは7-9月期の販売台数が過去最多

その一方、電気自動車大手のテスラはこれまでのところ減産計画を一切発表していない。それどころか、21年7-9月期の世界販売台数が過去最多の24万1300台(前年同期比+72.9%)と絶好調だ。なぜ、ここまで明暗が分かれたのか? 理由は3点ほど挙げられる。

 

1点目は半導体における代替品の活用だ。テスラのイーロン・マスクCEOは21年4-6月期の決算会見で、「数週間で半導体の代替品を用意しソフトウェアを書き換えた」ことを明らかにした。供給が比較的安定していた先端半導体へ素早く切り替えたことが奏功したと考えられる。

 

2点目はテスラの自動車工場が2拠点(カリフォルニアと上海)しかないことだ。グローバルに生産拠点が点在し、自動車部品などのサプライチェーンも複雑化する大手自動車メーカーとは異なり、テスラの自動車工場は数が少ないうえ、製造工程も内製化が進んでいることから、供給網のボトルネックによる影響も軽微だった可能性がある。

 

3点目は自動車生産能力が年間で100万台にも満たないことだ。電気自動車はガソリン車と比較して1台当たりの半導体搭載金額が2倍以上になると一般的に言われているが、そもそも確保すべき半導体の絶対量が大手と比較して少なかったことも、テスラにとっては追い風となっている。

 

株式市場では、大手自動車メーカーの株価とテスラの株価との間でパフォーマンス格差が広がっている【図表】。

 

日次、現地通貨建て、配当込み、2021年7月末=100で指数化 期間:2021年7月末~2021年10月22日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
【図表】主要自動車メーカーの株価推移 日次、現地通貨建て、配当込み、2021年7月末=100で指数化
期間:2021年7月末~2021年10月22日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

減産計画を発表したトヨタ、ホンダ、日産やGM、ステランティスの今年7月末以降の株価パフォーマンスは概ね横ばい圏で推移する一方、販売台数が過去最多となったテスラの株価は右肩上がりで推移し、10月22日には上場来高値を更新した。「半導体ショック」への対応力が、株価パフォーマンスの方向性を左右する展開となっている。

 

 

※個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『自動車業界 「半導体ショック」への対応力で明暗』を参照)。

 

(2021年10月25日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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