「精神科なんて一生縁がないと思っていた人」ほど…
PSMの考え方は、患者の療養にも大きくプラスに働きます。
例えば、臨床の現場でよく出会う典型的なパターンが、「自分は精神科なんて、一生縁がないと思っていた」という人たちです。
こうした人たちは、精神科にかかるのは頭のおかしい人だと多数派の側から見下していたのに、突然自分が精神疾患になって異常の側に転げ落ちてしまった、なんということだ、と嘆き悲しむのですが、こうした考え方にとらわれていると、ただでさえ疾患で苦しむその患者は二重に苦しむことになります。
疾患に対する固定観念は、療養の妨げになります。
人は異常と正常のいずれかに分類されるものではなく、さまざまな領域で一定の条件がそろうと少数派の反応を起こす人がいるだけです。
それ以上でもそれ以下でもないことを理解してもらうだけで、スティグマが軽減し、療養に取り組みやすくなります。
小椋 哲
医療法人瑞枝会クリニック 院長