銘柄ごとの「特徴」に合わせて売買を行う
人気優待銘柄の特徴として、権利確定日に向かって株価が上昇しやすい傾向があることが挙げられます。人気の優待であればあるほどその動きは顕著となり、権利落ち日以降に権利取りを終えた投資家からの売りが広がり、時には優待や配当分以上に株価が下落することもあります。
個人投資家に人気のある優待銘柄の中には、株価が下落した後、2~3カ月程度経過すると、再び次の権利確定月に向かって上昇へと向かう傾向が見られる銘柄があります。こうした傾向や銘柄ごとの特徴に合わせて売買を行い、優待と売却益の両方の獲得を目指すのが基本的な戦略となります。
投資資金に余裕がある方は、1銘柄につき2単元購入しておく方法があります。株価が低いタイミングで2単元購入し、上昇してきたら1単元は売却、もう1単元はそのまま残し、売却益と優待品の両方を得るという方法です。
売却益については、事前に何%上昇したら利益確定するという目標を設けておくことで、タイミングを逃さずに売却しやすくなります。
また、投資金額にも余裕を持っておくことが重要です。ある一部の銘柄や業種に資金を集中させ過ぎると、万が一、株価が下落した場合に大きなダメージにつながりかねません。少額で売買できる銘柄から少しずつポートフォリオを組むことからスタートしてください。
「権利取りの動き」が早まる場合は要注意
では「買い時」や「売り時」を見極めるには、どうすればよいのでしょうか。伊藤園第1種優先株式(25935)を例に、チャートで見る買い時、売り時について解説します。
伊藤園(2593)は普通株式の他、伊藤園第1種優先株式を発行しています。この第1種優先株式とは、普通株式に比べて利益の配当または残余財産の分配を優先的に受け取ることができる株式です。具体的には同社の優先株式の配当は普通株式の1.25倍となっています。ただし、優先株式には原則として議決権がない点には注意が必要です。
伊藤園第1種優先株式の優待品は普通株式と同様で、100株以上の保有で1500円相当の自社製品を受け取ることができます。普通株式と同じ優待品が手に入ることに加え、配当金にもプレミアがついているので、個人投資家から注目度の高い銘柄です。
そのため、日経平均が急落する局面でも、下落率が小さくなりやすい傾向があります。では、優待権利確定日以降の値動きはどうでしょうか。
チャート上で過去の値動きを確認してみます(下記図表参照)。
[図表]伊藤園第一種優先(25935)
直近の権利付最終日は2015年4月24日でした。この日の終値は2000円です。翌営業日の4月27日は権利落ちの影響があり、始値は1921円となりました。実際の最低投資金額で換算すると、100株買付の場合、20万円で買付した株式が19万2100円になる計算です。
始値で売却した場合は、売却によりマイナス7900円、対して権利取りしたのは1500円相当の優待品と2500円の配当金です。権利確定日の終値で買付し、権利落ち日の始値で売却した場合、差し引きで3900円相当のマイナスとなってしまっています(売買手数料や税金は加味しない)。
もう少し日付をさかのぼってみると、2015年1月頃の株価は1800円台であり、以来少しずつ上昇を続けています。もちろん、日本市場全体の上昇要因もありますが、3カ月前頃から徐々に上昇しています。
このような特徴は同社特有の動きで、権利付最終日に向かって上昇基調になることが多くなっています。優待の権利取りが意識されやすい銘柄はこのように株価の推移がパターン化しやすい傾向にあります。
こうした傾向から、権利付最終日より前に、余裕を持って株式を保有しておくことが有効な投資手法の一つと言えます。
注意しておきたいのが、権利取りの動きが早まる場合です。銘柄によっては権利付最終日に向けての動きが過去のパターンより早まり、権利付最終日を待たずに売られ出すこともあります。権利取りで優待、配当を得る前に株価が上昇したところで利益確定売りが多く入る動きです。
おおよその値動きはパターン化されやすい銘柄も、必ずしも権利付最終日のぎりぎりまで上昇するものではない、という点については注意が必要です。
値動きがはっきりしている場合はパターンを決めておく
ここまでご紹介したように、値動きがはっきりしている銘柄の場合、いくつかの売買パターンをあらかじめ決めて取引するのが有効だと考えます。
①優待目的で長期保有を続ける銘柄②パターン化しやすい銘柄を、3カ月前を目処に保有株数を増やし、その内の半分を上昇局面で売却する③優待取りにこだわらず、優待や配当以上に利益が出たならその時点で売却する・・・などといった具合です。
また、短期間で優待や配当だけを権利取りしたい場合、現物株式と一般信用取引を活用した「つなぎ売り」を活用する手法もあります。