※画像はイメージです/PIXTA

マンションの各部屋の所有権は各区分所有者にあるわけですが、修繕工事を無断でしてしまってもよいものなのでしょうか。ここでは「マンションの区分所有者に『勝手な修繕』をやめさせるには?」という管理組合からの質問に、香川総合法律事務所・代表弁護士の香川希理氏が答え、解説していきます。 ※本連載は、書籍『マンション管理の法律実務』(学陽書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

「民事訴訟」をしても手遅れの可能性大だが

当該区分所有者が、管理規約に違反し、無断で修繕工事等を開始してしまった場合、標準管理規約67条3項において、理事長は、区分所有者が行う管理規約に違反する行為について、同行為を差止めるために法的措置をとることができる、とされています。

 

しかし、このケースの修繕工事等のように、緊急性を要する場合に、通常の民事訴訟を提起していては、手遅れになってしまうおそれがあります。なせならば、通常の民事訴訟の場合には判決が出るまでに1年以上かかることもありますが、専有部分の修繕工事等は数ヶ月で完了してしまうことがほとんどだからです。

 

そして、「同修繕工事等が、建物に悪影響を及はすものである場合には、工事が完了してしまったのちに、差止請求や損害賠償請求が認容されても、その悪影響を回復することは困難です。そこで、修繕工事等が完了する前に、できる限り早期に同工事等を止める必要があります。

 

その方法としては、仮処分命令の申立てが有効です。

 

仮処分であれば、2週間から2ヶ月程度の早期決着をつけることも可能です。

 

仮処分が認められるためには、「被保全権利」と「保全の必要性」という要件を満たす必要があります。

 

「被保全権利」の要件においては、仮処分で保全されるべき権利が存在することを疎明する必要がありますが、上記のとおり、管理規約に違反する行為が行われている場合には、管理組合は(標準)管理規約67条3項に基づき差止請求権を有します。

 

「保全の必要性」は、本訴が終わるまで待っていては権利の実行が困難になる場合に認められます。この点、本ケースの修繕工事等の場合、工事が完了し建物に悪影響が出てしまっては手遅れになってしまいますので、まさにこの要件を満たすといえます。

 

 

香川 希理

香川総合法律事務所 代表弁護士

トラブル事例でわかる マンション管理の法律実務

トラブル事例でわかる マンション管理の法律実務

香川 希理

学陽書房

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