※画像はイメージです/PIXTA

日本に住んでいるが、国籍は外国という「在日外国人」は293万人。そのうち44万人が在日韓国人です。もし相続が発生し、日本、韓国双方に遺産がある場合は、相続税の申告はどのようになるのでしょうか。税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が解説します。

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韓国の相続税率…最高55%

日本の在日外国人293万人以上のうち、44万人以上が在日韓国人です(2019年末時点)。日本人同様、在日韓国人の高齢化も進んでおり、韓国が関係する相続(在日韓国人の相続や財産が韓国に所在する相続等)が毎年一定数発生しています。

 

韓国にも日本と同様に相続税があり、最高税率は55%(筆頭株主の割増課税を適用すると60%)となり、日本と同様先進国で最高水準になります。2020年に亡くなられた韓国サムソン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長の相続税が総額12兆ウォン(約1兆1600億円)を超えるというニュースが流れました。

 

韓国が関係する相続が発生した場合、日韓それぞれの相続税に関して、①誰に納税義務があるのか(納税義務者)、また②課税対象とされる財産がどこまで含まれるのか(課税財産の範囲)を検討する必要があります。

相続税の納税義務者と課税財産の範囲

2021年10月時点で日韓では相続税に関する租税条約がなく、二国間での相続税の納税義務者及び課税対象範囲の調整は行われません。従って、被相続人及び相続人の国籍や居住状況によっては、日韓両国において全世界財産(日本の財産及び韓国の財産の双方)が、両国の相続税の対象となってしまう可能性があります。両国において、全世界財産が課税対象となった場合でも、海外財産に係る相続税について「外国税額控除」による二重課税の排除の仕組みはありますが、累進課税である相続税率が高い水準となってしまう可能性があります。

 

日韓における相続税の納税義務者及び課税財産の範囲については、両国それぞれの税法等に照らして個別に判定していく必要があります。

日本における相続税の納税義務者と課税財産の範囲

日本においては、相続又は遺贈により財産を取得した個人は、下記図表の区分(被相続人及び相続人の状況)に従い、取得した国内財産・国外財産のすべて、または、取得した国内財産のみ、相続税が課税されます。

 

・無制限納税義務者 = 国内財産・国外財産の全てに課税される者(図表の水色部分)

・制限納税義務者 = 国内財産のみに課税される者(図表の水色部分以外)

 

出所:国税庁HP
[図表]納税義務者の判定(課税時期:平成29年4月1日以降) 出所:国税庁HP

 

※1 出入国管理及び難民認定法の定める在留資格があり、過去15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者。
※2 日本国籍のない者で、過去15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者。
※3 平成29年4月1日から令和4年3月31日までの間に「非居住外国人」(平成 29 年4月1日から相続又は遺贈の時まで引き続き日本国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない者)から相続又は遺贈により財産を取得した場合は非居住制限納税義務者となり、国内財産のみが課税対象になる。

 

上記の判定においては、「住所」の定義づけがポイントになりますが、相続税法や所得税法においては「住所」の定義が規定されていないため、民法の定義を使用することになります。

 

民法第22条:各人の生活の本拠をその者の住所とする。

民法第23条1項:住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。

 

一般的に住所は住民票のある場所であることが多いですが、厳密には上記の「生活の本拠」は住民票とは無関係で、職業や生計を一にする家族の居住場所、資産の所在など、客観的事実に基づいて判定することになります。

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