近年、経済のグローバル化に伴い、国境を越えたヒト・モノ・カネの移動が盛んとなり、富裕層を中心として個人の海外投資が拡大し、同時に国境をまたいだ相続の件数も増加しています。その結果、各国の相続税などの課税方式の違いや納税義務者や相続税の対象となる財産の範囲の違いを原因として、国際的に二重に相続税が課税されてしまう可能性があります。今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が、海外財産の相続時に発生する二重課税の問題について解説していきます。
日本における相続税の納税義務者と課税財産の範囲
日本において相続又は遺贈により財産を取得した個人は、[図表1]の区分に従い、取得した国内財産・国外財産のすべて、または、取得した国内財産のみ、相続税が課税されます。
・無制限納税義務者 = 国内財産・国外財産のすべてに課税される者([図表1]の水色部分)
・制限納税義務者 = 国内財産のみに課税される者([図表1]の水色部分以外)
細かいルールの説明は割愛しますが、基本的に被相続人と相続人のどちらかが日本国内に住所があれば、「無制限納税義務者」として、国内財産、国外財産のすべてに課税されます。一方、被相続人と相続人のいずれもが過去10年以内に日本国内に住所がなければ、「制限納税義務者」として国内財産のみ課税され、国外財産については相続税の課税対象から外れます。
相続に関する一般的な国際ルール
例外もありますが、相続税の課税においては、被相続人または相続人がその国の居住者(≒無制限納税義務者)である場合には、全世界財産に対して課税し、非居住者(≒制限納税義務者)である場合には、自国に所在する財産に対してのみ課税するという原則が、日本を含む世界各国で一般に採用されています。
ここで、各国の税法における「居住者」の定義がポイントになりますが、課税上の「居住者」を決定するためには、以下の3点が考慮されます。
①判定基準
住所または国籍で検討されます。
②判定対象者
相続人または被相続人が判定対象になります。
③判定時点
原則として財産を相続した時ですが、過去数年間の居住地が問題とされることがあります。
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税理士法人ブライト相続
代表社員税理士・公認会計士
1979年生まれ 東京都出身
横浜市立大学商学部卒
監査法人トーマツで上場企業の監査に従事。
税理士法人レガシィで相続関連コンサルティング業務に従事。
2019年に税理士法人ブライト相続を設立。現在では年間約500件の相続税申告、その他多数の相続・事業承継対策支援サービスを提供している。
2020年にTASKI株式会社を設立。「自分で相続税申告」できるTASKI相続税申告システムを提供している。
「信頼できる相続・贈与に詳しい相続税理士50選」(日本経済新聞2021年4月16日)
著書:「有価証券の信託に係る税務上の諸問題について」信託フォーラム第14号
「円満相続をかなえる本」幻冬舎
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=7269
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