本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』を転載したものです。※いかなる目的であれ、当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

グロース「指数」にはどんな銘柄が?

一方で、グロース指数にはEPSなどの成長率の高いものだけでなく、利益の成長率は名目経済並みであるものの、PERが非常に高いディフェンシブ株式が(バリュー属性からかなり遠いために)含まれる場合があります。

 

また、グロース企業は本来、売上や利益の規模(ベース)がまだ小さく、成長が始まったばかりであるために、それらの成長率が非常に高くなりがちで、高成長の持続を株価が織り込んで割高になる銘柄群です。そうした企業は規模が大きくなったり、参入企業が増えたりすると、成長は鈍化していくはずです。

 

しかし、グロース指数の現状を考えると、大規模でかつ利益成長率の高い銘柄が支配的です。「大規模な企業の利益がさらに成長する」ということは、完全競争とは矛盾し、独占を示唆します。

 

こうした大型・独占企業は、個人情報の収益化、店子のデータの自社販売への利用、店子と自社商品の検索表示順序、オーガニック検索結果と自社検索広告の表示方法、SNS投稿の検閲と真偽の判定、高価格商品の継続投入と低賃金(経済格差)との矛盾など、大型・独占ゆえに、利益の成長余地や規制強化に関するリスクは小さくなく、現在の高バリュエーションにはそうしたリスク・プレミアムは反映されていません。

 

合わせて、そうした一部の大型・独占銘柄がグロース指数や全体指数に占める割合は大きく、分散投資の基本からはかけ離れています。

 

このように、現時点のグロース指数は、一部の巨大化した企業に成長鈍化や規制強化のリスクがあり、なおかつ巨大化したために投資リスクが集中しています。

 

まして、日本の投信市場で人気のある大型のテクノロジー企業に選択的に投資する投資信託は、市場全体のインデックス投信でも十分に取れるリスクに対して、より高い手数料を取っていることを知っておく必要があるでしょう。

 

これらと比べれば、株価にはピーク感があるものの、小型の高成長銘柄に投資を行う投資信託のほうが「グロースらしい銘柄に投資をしている」と筆者は考えています。
 

[図表3]バリュー指数とグロース指数のイメージ図
[図表3]バリュー指数とグロース指数のイメージ図

日本株の場合は?

最後に、日本について考えると、パイの奪い合いに終始するのみで、業種全体で見れば利益が成長しない一部の業種が含まれます。割安に見えても、株価が上がらない「バリュー・トラップ」に陥っている銘柄群です。

 

そうした業種は、円高解消とインバウンドの追い風で利益が一時的に押し上げられていた可能性があります。

 

このほかにも、ESG(環境・社会・ガバナンス)のリスクを抱える企業も少なくありません。個人投資家の立場でのインデックス投資は、日本のそうした企業にもお金を投じるわけですから、投下資本の効率は良くないと考えられます。

 

まとめると、米国や世界市場に投資をする場合、バリュー指数には「バリュー・トラップ」に陥っている業種や銘柄に資金を多く投じる可能性があり、グロース指数では大型のテクノロジー企業がリスク対比割高になっている可能性があるほか、分散効果が効いていない状態です。

 

また、日本は、パイが成長しない業種やESGのリスクを考えると、個人投資家の立場でのインデックス投資は効率的とは言い難いでしょう。アクティブ投資を検討したいところです。

 

 

重見 吉徳

フィデリティ投信株式会社

マクロストラテジスト

 

 

 

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