すでに始まっている「円安時代」
ドル高以上に進展する円安、120~130円も
しかし日本円は対ドルだけではなく、各国通貨との間でも安くなっている。またドル高に転換する1年前から既に円安は始まっていた[図表3]。日本側にはドル高以上に、円が安くなる要因が山積している。
2.経常収支の黒字はもっぱら所得収支でありそれは現地で再投資されるので日本には戻ってこない黒字であること[図表4、図表5]
3.日本企業は膨大な内部留保をグローバル直接投資に振り向けており資本流出が続くこと
4.日本の証券投資家も米国株式、米国国債等海外投資を増加させていること
等である。2021年に入ってからFRB、ECB等世界主要中央銀行がバランスシートを膨張させている中で、日銀だけは資産購入を密かに減らしている(ステルステーパリング)[図表6]。
本来なら円高になってもいいはずのところだが、むしろ円安が強まっている。底流に流れる円安圧力をうかがわせる。円が安全資産として選好される時代は終わった可能性がある。1ドル=120~130円も視野に入ってくるだろう。
アメリカは円安が日本のデフレ脱却、経済再生の鍵であることを知っている
おそらく米国は円高が日本のデフレの最大の要因であり、円安がデフレ脱却の切り札であることを知っている。
その米国が日本の円安を容認するかだが、容認どころか望ましいと思っているのではないか。米中対立の下で強い日本経済は必須であり、日本がデフレ脱却をしてほしいと心から思っているはずである。
さらに中国・韓国・台湾などの危険地帯に集中している半導体などのハイテクサプライチェーンを安全地帯へシフトさせることが喫緊の課題であり、日本でのハイテク産業クラスターの育成強化はその重要な柱である[図表8]。それを推進するのに円安は重要である。
TSMCのソニーとの合弁による熊本工場建設が決まった。日本政府が総投資額8000億円の半分の4000億円を補助すると伝えられているが、それは日本のコストが高いからである。しかし1ドル120~130円になれば、日本のコスト劣位は霧消するだろう。