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株式乱高下、「岸田ショック」とシビアな見方も
9月以降の日本株式の乱高下、急騰とその後の暴落はいかに株式市場が政策に敏感であるかを示すものとなった。
菅前首相が総裁選不出馬を表明した9月3日から10日足らずで2200円、7.6%と急騰した日経平均株価は、岸田氏が自民党の総裁選に勝利した9月29日以降、6日間で2600円、8.7%の大暴落になった。
その要因として、中国不動産大手企業、恒大集団の経営危機、米国の債務上限問題、原油高騰など海外要因も指摘されている。しかし同期間に米ダウ工業株など海外株式はほぼ横ばいであったので、この暴落はもっぱら日本独自のものであったと言える。
菅退陣で派閥力学脱却、陣容一新の改革政権ができるとの期待が高まったが、岸田新政権誕生によりそれが失望に変わったとのシビアな見方もできる。
岸田新政権の「非改革」と「所得税増税検討」に失望
海外投資家が一番心配するものが、岸田氏が改革路線に背を向けるのではないかということである。
筆者は自民党総裁候補者諸氏の、反経済主義的傾向に懸念を持っていたが、中でも一番心配されたのが、岸田氏の新自由主義批判であった。
岸田氏による新自由主義批判の中身は今一つ明確でないが、規制緩和、構造改革が富める者と富まざる者との分断を生じさせたとして、反改革ともとれるポジショニングになっている。そして岸田氏は、分配政策により格差縮小を目指すと野党かと見られるような主張を展開した。
その後、①「新資本主義実現会議」創設、②教育費支援、看護師、介護士の給与引き上げなど中間層支援、③原資としての金融所得税増税、等、岸田氏の「新しい日本型資本主義」の中身が見えてきた。
それは安倍・菅政権が推進してきた、「規制緩和と改革によりビジネスを自由に」「市場の力を使った企業統治改革や経済の構造改革」という基軸から大きく外れるものである可能性が大きい。
実際、10月8日の所信表明演説では岸田首相は、菅前首相が16回も言及した「改革」というキーワードに全く触れず、代わって「分配」を多用した。
世界の投資家が警戒する、1990年代以前の古いニッポンに戻ってしまうのではないかとの懸念を払しょくするものではなかった。
この警戒心をまるで正当化するかのように、10月7日付の新聞各紙は「政府は金融所得課税の見直しを年末の2022年度税制改正で議論する方針だ。現在20%の税率を一律で引き上げる案や、高所得者の負担が重くなるよう累進的に課税する案を検討する」と報道した。
金融所得税見直しの前言撤回、柔軟性は岸田政権の特徴になるか
もっとも10日のテレビ番組でのコメントで、岸田首相は金融所得課税について「当面は触ることは考えていない」と早くも政策を修正する意向を示した。金融所得課税が日本株価暴落の原因だとする市場の声に配慮したものと見られる。この柔軟性は岸田政権の特徴となるかもしれない。
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