チリ、通貨安が止まらない (※写真はイメージです/PIXTA)

主な南米通貨の対ドルレートを年初来で見ると、アルゼンチンペソと並んでチリペソが軟調となっています。同じ南米のペルーやブラジルの通貨を下回るパフォーマンスでした。チリペソが足元まで軟調であった主な背景は金融政策、軟調な銅価格、そして政治動向があげられます。今後の展開を占う上でチリペソ下落の要因を整理します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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チリ中銀:ペソ安が続く中、チリ中銀は市場予想を上回る利上げを決定

チリ中央銀行は2021年10月13日の政策決定会合で政策金利を1.25%引き上げ、2.75%としました(図表1参照)。今回の利上げ幅は8月会合での0.75%、市場予想の1%を上回りました。

 

日次、期間:2020年10月15日~2021年10月15日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]チリの政策金利とペソ(対ドル)の推移 日次、期間:2020年10月15日~2021年10月15日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

チリの通貨ペソ安が進行する一方で、9月の消費者物価指数は前年比で5.3%とチリ中銀のインフレ目標3%±1%を上回っています。

どこに注目すべきか:チリペソ、銅価格、チリ憲法、大統領選挙

主な南米通貨の対ドルレートを年初来で見ると、アルゼンチンペソと並んでチリペソが軟調となっています。同じ南米のペルーやブラジルの通貨を下回るパフォーマンスでした。チリペソが足元まで軟調であった主な背景は金融政策、軟調な銅価格、そして政治動向があげられます。今後の展開を占う上でチリペソ下落の要因を整理します。

 

まず、金融政策を振り返ると7月の最初の利上げはペソ安の流れを変えられませんでした。理由は最初の利上げにおいて、今後2年程度の緩やかなペースでの利上げを示唆し、利上げ幅を0.25%に留めたからです。そこで前回は利上げ幅を0.75%としてペースを早め、声明でも引締め方針を強めました。今回も市場予想を上回る1.25%の利上げにより、緩やかな引締めイメージの打ち消しに努めています。

 

次にチリの主要産業である銅価格は5月頃から足元まで緩やかな下落傾向でした(図表2参照)。

 

日次、期間:2020年10月15日~2021年10月15日、先物価格は期近物 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]銅先物価格の推移 日次、期間:2020年10月15日~2021年10月15日、先物価格は期近物
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

原油など商品価格が軒並み上昇する中、銅など一部の資源価格は軟調に推移しました。背景として中国の景気減速が考えられます。中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の低下に歩調を合わせるように銅価格は軟調な展開となりました。

 

なお、足元の銅価格は在庫減少等を背景に急上昇していますが今後の展開は不確実要因が多いと見ています。

 

政治もペソ安要因と見ています。今年5月にチリで新憲法を起草する議員を選出する制憲議会選挙が行われました。開票の結果全155議席中、連立与党(中道右派)が獲得した議席は37議席にとどまり3分の1を下回りました。制憲議会は、1年以内に憲法草案を作成しますが、採択には議員の3分の2以上の賛成が必要なため中道左派、左派など野党の協力が求められそうです。現行憲法は自由経済を尊重し外国からの投資を促進してきた面があります。

 

一方でマイナス面として年金など国民福祉が不十分でした。国民の不満の高まりが5月の投票結果を左右したと見られます。野党が国民福祉重視の姿勢を強めるあまり、海外からの投資が抑制されることへの不安などがペソ安要因と見られます。

 

そのうえ、チリでは11、12月に大統領・議会選挙(11月21日第1回投票、12月19日決選投票)が予定されています。足元の世論調査でも大統領選挙では左派陣営のガブリエル・ボリッチ下院議員が概ねリードを保っています。

 

なお、チリでは今年春頃から新型コロナウイルスの感染再拡大が見られ数ヵ月感染拡大が続きました。チリのワクチン接種比率は高く南米ではワクチンの優等生でした。しかしチリで行われたワクチン接種はほとんどが中国製で効果を疑問視する報道も見られます。因果関係の真偽は今後の検証を待つ必要がありますが、足元は落ち着きが見られる新型コロナですが、今後もペソの変動要因となる可能性があります。

 

ここまで、ペソの変動要因を振り返ってきましたが、選挙が近いこともあり政治が要注目と思われます。なお余談ながら、チリは中国が環太平洋経済連携協定(TPP)へ加盟申請を発表したことに対し支持する意向を示しています。チリの政治は日本にとって対岸の火事ではすまないのかもしれません。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『チリ、通貨安が止まらない』を参照)。

 

(2021年10月18日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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