「華やかにしたい」…植木鉢が“逆効果”であるワケ
植木鉢が増えることによって店前がごちゃごちゃし、整理整頓できていない店という印象を与えます。手入れが行き届かず、花が枯れたりすることによって、華やかさとは真逆のみすぼらしい見た目にもなります。
看板に限らず、モノは一つひとつが情報を発信します。花を置けば、お客さんは「花が好きな店主なのだな」と思います。そのため、何かモノを置くのであれば、そのモノがお客さんにどんなメッセージを発信するか考える必要があります。
つまり「花が好きな店主」という情報を、わざわざ発信する必要があるなら花を置くのがよいでしょうし、発信する必要がないなら、花を置く必要もないということです。
また、「花が好きな店主」と伝えたい場合も、その情報がどれくらい重要かを考える必要があります。
店頭のスタンド看板でおすすめメニューを伝える場合、看板が「これがおすすめです」と情報発信します。お客さんに伝える情報の優先順位としては、「花が好きな店主」であることより「おすすめメニュー」のほうが高いはずです。おすすめメニューをより伝えやすくするのであれば、優先順位が低いその他の情報はなくしたほうが得策です。
「花が好きな店主」であるという情報や、その情報を発信する花そのものをなくすことにより、伝えたいことを絞り込み、伝えやすくするのです。
逆に、伝えたいことを伝えるために必要なものであれば、店頭や店内にたくさん並べるのがよいでしょう。例えば、安売り店の店頭はセール品が雑然と並べられています。ドラッグストアなどではセール品を無造作に積んでワゴンセールをしていたり、商店街の洋服屋などでは安売りの洋服をハンガーにかけて店前に出したりしています。
これらはファサードがごちゃごちゃして見える要因ですが、必要か不要かという視点で考えると、必要です。なぜなら、セール品を並べることにより、「この店は安いです」という最も重要な情報が伝わりやすくなるからです。
店内についても、例えば、ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードの店内はごちゃごちゃしています。これも整理整頓されていない印象を与えますが、「あらゆるものがそろっている」「面白いもの、変わったものを売っている」といった重要な情報が伝わりやすくなるため、このタイプの店にとっては、店内が雑然としていることが重要なのです。
越智 一治
有限会社オチスタジオ 代表取締役