「暴力」だけではない…虐待の「種類と原因」
2006年4月、高齢者虐待防止法が施行されました。高齢者が尊厳を保ちながら安心して暮らせるよう、必要な措置が定められています。厚生労働省の「高齢者虐待防止の基本」によれば、養護者による高齢者虐待の種類には、身体的・心理的なものから介護放棄といったものまであります。また、おもな虐待に至る原因としては、以下があります。
<おもな虐待の原因>
①介護の知識・情報不足
②認知症に伴う言動に対するストレス
③長期の介護によるストレス
④経済的な問題など
国民は高齢者虐待の通報義務がある
高齢者虐待防止法では、国民全般に高齢者虐待に係る通報義務を課しています。福祉・医療関係者に対しては、早期発見の協力を求めるとともに虐待発見時の相談窓口や通報の目安などに関する研修を行うことと定めています。
介護施設や養護者(高齢者を養護する家族など)による虐待の通報を受けた場合、市区町村は実態把握のため立入調査を行い、やむを得ない理由がある場合は面会制限などを行います。
また虐待は未然に防ぐことが最も重要なため、早期発見のために虐待が確定しているケースだけでなく、虐待の疑いの段階で通報することを求めています。自宅や介護施設から怒鳴り声や泣き声が聞こえる、お風呂に入っている様子がないなどの情報があれば、速やかにお住まいの市区町村に通報してください。
市区町村は高齢者だけでなく、養護者に対する支援として相談・指導・助言を行うとともに、負担軽減のために必要な措置を行います。
虐待が確認された場合は、高齢者が安心して暮らせる環境を作るよう双方への支援を行います。高齢者虐待は、養護者を加害者として捉えてしまいがちです。しかし、介護疲れや養護者自身がなんらかの支援(経済的・障害・疾病など)を必要としている場合も少なくありません。高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を「家庭全体の課題」として考え、高齢者・養護者・家族に対する支援を行っています。
自らが虐待加害者にならないために早めの相談を
介護をひとりで抱え込み、行きづまる前に地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。彼らは守秘義務があるため、金銭的・精神的悩みでも恥ずかしがる必要はありません。状況に合った適切なアドバイスをしてくれるはずです。介護はチームで行うもの。「あなたはひとりではない」ことを決して忘れないでください。
河北 美紀
株式会社アテンド 代表取締役
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】