(※画像はイメージです/PIXTA)

企業オーナーの場合、資産の大半が自社株であるケースは少なくありません。分散投資でリスクをヘッジする場合、自社の業績と連動しない商品を選択するのはもちろんですが、ほかにも確認すべきポイントがいくつかあります。メガバンク出身の目白大学短期大学部ビジネス社会学科教授、藤波大三郎氏が解説します。

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「自社の業績変動と異なる値動き」をする資産を持つ

企業オーナーの資産状況は、大半が自身の経営する企業の株式で占められている場合が少なくありません。これは、保有資産の大半が自分が経営する企業の業績に依存する資産であるということになります。だとすれば、資産運用として「自分の企業の業績の変動と異なる価格変動をする資産」を保有することで、分散投資の効果を活用し、資産運用の安定化を図られてはと思います。

 

つまり、保有株式との分散投資によるリスク低減を考えるのです。その意味からすると、日本株式、とくに小型株へ投資を行う投資信託は、自身の保有する株式のとの相関性が高く、お勧めできません。

 

一般的に、企業オーナーの株式と相関性が小さいのは、海外の債券に投資を行う「海外債券ファンド」であると思います。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によると、外国債券と国内株式の相関係数は0.14であり(2018年度末時点)、価格の変動にほぼ連動性がありません。

 

※ 相関係数とは、2つの変数の間の関係性を示す指標で、相関係数は+1から-1の間で表されます。プラスなら正の相関関係があり、マイナスなら負の相関関係があります。

 

そこで、とくに海外債券への投資が分散投資の効果を発揮してくるのです。投資地域を分け、投資対象の種類も、株式ではなく「債券」とすることで、自社の業績変動、つまり自社株の価格変動を考えた場合と大きく異なる投資ができます。

自社の成長が思わしくないなら、日本株への投資もアリ

債券以外に、内外の不動産に投資を行う不動産投資信託でもいいと思います。とにかく、自社の業績変動とは異なった値動きをする資産の保有をお勧めします。これがうまくいけば、リスクを減らしながら安定的な経済生活を得ることができます。

 

もっとも、日本株式への投資も魅力がある場合があります。それは自社の成長性が思わしくなく、日経平均株価の上昇、つまり日本企業全体の発展に追いつけない場合です。その場合、事業から得た資金、つまり給与や役員報酬を日本株式投資、具体的には日経平均株価のインデックス・ファンドに振り向けて、より有効な資産運用を考えることが大切となります。

 

自社のROE(自己資本利益率)と、日経平均株価対象企業のROEを比較し、冷静に判断する必要があります。近年の中小企業のROEは全体では約7%(中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和2年調査の概況〈令和元年度決算実績〉)ですが、業種によっては4%程度となっています。

 

ROEは、PBRをPERで割れば算出できますので、比較は容易です。自社のROEが日経平均株価225社のROE約9%(2021年10月8日時点)を上回る場合は、役員報酬や配当金は自社へ再投資したほうがよいといえます。しかし、その場合でもリスクヘッジという意味で海外債券投資や不動産投資信託、さらには世界の新興国への株式投資といった分散投資は欠かせないと思います。

 

もっとも、分散投資を理論的に支える現代ポートフォリオ理論は素晴らしいですが、限界もあります。まず、インデックス・ファンドのように市場全体の動きに連動するファンドであっても、投資タイミングの影響を受けることです。例えば、日本の株式に分散投資をする投資信託は、日経平均株価の変動に見られるように、いくら分散投資を行っても、市場全体の変動リスクから逃れることはできません。これを市場リスクと呼びますが、1990年のバブル崩壊はその例です。

 

そこで市場リスクに対する場合は、投資時期を分けるといった工夫が必要となります。これを「時間的分散」と呼ぶことがあります(なお、長期投資のことを「時間分散」と呼ぶことがありますので、時間的分散と区別が必要です)。投資の開始を複数回に分けて行い、投資時期を分散する方法が無難ではないかと考えます。こうすれば、収益を上げる機会も逃すでしょうが、一時的な割高局面での投資額も抑制されることになります。

 

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