(※画像はイメージです/PIXTA)

日本の個人金融資産1900兆円の約7割は、高齢者が保有しています。そこには、孤独や死への不安軽減の手段として預貯金を維持するという、高齢者特有の心理が働いています。しかし、次世代へ資産をつなぐ、超長期を見据えた投資行動には、高齢者の気持ちを明るくし、心を安定させる効果があることもわかっています。メガバンク出身の目白大学短期大学部ビジネス社会学科教授、藤波大三郎氏が解説します。

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日本の金融資産の大半を保有する高齢者たち

70歳代以降になると、相続について考えることも増えてくることでしょう。この年代の富裕層の方の資産運用として大切なのは「超長期の運用」だといわれています。

 

人はだれでも高齢期になると、無意識のうちに健康問題、孤独、そして死への不安を抱えて暮らすことになりますが、相続の話題、例えば「終活」は、そうした不安を顕在化させる可能性があります。生前贈与を求める子どもの言動は、親が潜在的に抱える不安へ直接働きかけることになるため、十分な注意と配慮が求められます。

 

逆に、親の立場からすると、子どもに残す資産の運用において、長期の運用計画を考えて実行することが大切です。一般的に、引退期の生活費に当てる資金のリスク許容度は低いのですが、自分で使用しない資金、すなわち相続財産として子どもに残そうと考えている資金であれば、リスク許容度は大きくなります。そこで、収益性の高い運用を行うことが可能となってきます。

 

なお、わが国の65歳以上の高齢者世帯は、平均的で42年間分の取り崩しができるペースでしか金融資産を減少させていません(保有金融資産約2300万円、年間取り崩し額約55万円の場合)。女性の場合、65歳時点の平均余命を約24年間としても、約18年間取り崩すことのできる金融資産を残して死亡しています。

 

つまり、わが国の高齢者は一般にお金を残して亡くなる方が多く、そのため、日本全体の個人金融資産の多くを高齢者が保有することになっています。そうしたお金の運用は株式等リスク資産で運用したほうがわが国の経済のためですが、実際には預貯金となることが多いのです。

長期資産運用への取り組みは、高齢者の精神安定に効果

富裕層の方は、たとえ投資開始年齢が70歳代でも、投資成果の実現を、次世代以降の遠い将来に設定してみてはいかがでしょうか。例えば、株式で投資を行う投資信託は、長期的なほど投資成果が安定し、結果的に高い収益を期待できる投資対象です。日本証券経済研究所の杉田浩治氏によると、東証一部の全銘柄に30年間投資を行った場合、平均で10.1%、最低でも6.8%になる試算があります(投資信託協会ホームページ)。

 

これと同様なことは、TOPIX(東証株価指数)に連動するインデックス・ファンドへの投資でも実現可能です。また、金融庁によると、銀行・証券の顧客を調べた場合、投資信託の平均保有期間が長いほど、運用損益がプラスの顧客比率が相対的に高いという傾向が確認されています(金融庁ホームページ)。

 

高齢者が長期の資産運用に取り組むことは、死への不安を軽減し、精神を安定させる効果があるとされています。年金をもらいながらも定期預金を増やす高齢者の方が多い理由は、そうした点にあるといわれます。しかし一方で、株式等のリスク資産による運用は、相続人である子どもからしばしば反対意見が出ることも、よく知られています。子どもとしては、親がリスクの高い商品に投資し、相続予定の金融資産が大きく減少するのを恐れているのです。

 

 

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