(※画像はイメージです/PIXTA)

日本のGPIFも取り入れている「現代ポートフォリオ理論」では、株価の変動は予測不可能とされています。投資経験のある人ならご存じの通り、株式投資の短期売買で成果を出すことは非常に困難です。しかしその一方、長期の分散投資なら、正しく行えばだれもがメリットを享受できます。これを活かさない手はありません。メガバンク出身の目白大学短期大学部ビジネス社会学科教授、藤波大三郎氏が解説します。

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株式市場は急変する…「予測に賭ける投資」は危ない

富裕層の方々の資産運用は短期売買での運用、いわタイミング・アプローチが多いのが現実かもしれません。日本証券業協会の「平成30年度 個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書」によると、個人株主の保有期間は「10年以上」(22.8%)が最も多く、40.3%が5年以上保有していますが、推計の平均保有期間となると4年8ヵ月となっています。

 

米国の投資家であるウォーレン・バフェットが師事し、証券分析の基礎を確立したベンジャミン・グレアムは、「投資とは詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。そして、この条件を満たさない売買を投機的行動である」と述べています。実際、短期の株式売買は投機と考えられる場合が多いと思います。

 

しかし、投機が悪いことではなく、投機家がいなければ証券市場は成立しません。ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンは、「市場を不安定的にする投機とは価格が低いときに売り、価格が高いときに買う投機家である。そのような非合理的な投機をする投機家は必然的に資金を失ってしまい、早晩、市場から消え去ってしまう運命にある。結果として市場には価格が低いときに買い、高いときに売るという安定的な投機をする合理的な投機家しか残らない。投機とは本質的に安定的であり、投機家の存在は市場の〈見えざる手〉の働きを強めるはずである」と述べています。

 

ともあれ、タイミングや銘柄によっていい運用成績を得て、それを継続することは大変難しいことです。株式市場は急激に変化することがあり、様々な要因が株価に反映されるため、予測は大変難しいものです。予測に賭けて投資をすることは、できれば避けたいことです。個別株式投資を行う場合は、その銘柄選択が重要になり、投資する銘柄が少なければ少ないほどその重要性は高まります。

 

しかし、専門のファンド・マネージャーでも銘柄選択はそう適切であるとはいえないのが現実です。また、株式市場に参加すれば、プロもアマもありません。米国等の外国人投資家も個人も、同じ土俵で銘柄選択を行うことになります。

個別株式投資より、投資信託による株式投資がお勧め

どう動くかわからない株式市場について、現代ポートフォリオ理論では株価の変動はランダム・ウォークし、予測不可能としています。現代ポートフォリオ理論は多くの機関投資家で採用されており、わが国ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もこれを採用し、2001年以来の累積収益率3.7%(年率)、累積収益額100.3兆円を得ています(2021年6月末時点)。

 

情報処理の早い市場では、あらゆる情報は瞬時に価格に織り込まれてしまいます。活字になって調査資料等となり、担当者の手許に情報が届くときには、それはすでに相場に織り込まれていると考えていいと思います。こうした考えを「効率的市場仮説」と呼びます。

 

一方で市場はそう効率的でなく、情報処理も誤りがあるのも事実です。典型は1980年代後半のバブル相場でしょう。当時、銀行の不動産業向けの融資の増加は広く知れ渡っていたことでした。また、米国はすでに不動産融資で問題が起こっていたので、日本の地価上昇と銀行の不動産向け融資に米国のアナリストは疑問を持っていました。

 

しかし、そうした意見は我が国の株式市場にはまったく反映されなかったのです。そういう意味では、市場の情報処理能力は低いといえる面もあります。とくに、いわゆる新興国の株式市場ではそうした傾向があります。

 

先述の現代ポートフォリオ理論は分散投資を行うのですが、具体的な金融商品としては投資信託として商品化されています。なかでもインデックス・ファンドと呼ばれ、日経平均株価やTOPIXに連動する成果を目指す商品がその典型的な商品で、米国のジョン・ボーグルによって米国で作られたのが最初です。彼は「インデックス・ファンドの父」と呼ばれています。

 

投資信託は多くの銘柄に分散投資を行い、価格変動のリスクをかなり小さくできます。富裕層の方にも個別株式投資より、投資信託による株式投資をお勧めしたいと思います。

 

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