(※写真はイメージです/PIXTA)

OECDの調査によると、日本でうつ状態にある人は2013年から2020年にかけて2.2倍に増加しています。しかし、精神医療現場には「短時間の画一的な診療」という課題が根強い状況。疑問を抱いた医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏は、積極的に患者の抱える問題に介入する「対人援助」を意識してきました。ここでは同氏が、患者に合わせた診療方法について解説します。

「質の良いサポート」ができるのはどんな精神科医?

当院の診療モデルは、予約診療のスキームや診療前の準備など、他院でもすぐに始められることは多くありますが、ぜひ注意を喚起したい点は、この診療モデルが医師の対人援助スキルに依存しており、それがなければ成立しないモデルだということです。

 

十分な診察時間と治療成果で患者の満足度を向上させると同時に、医師や病院スタッフのワークライフバランスとクリニック経営の安定を実現させるためには、医師個人の対人援助スキルを大幅に向上させる必要があります。

 

具体的には、立体ホログラムレベルのアバター(※)が出来上がるほどに患者の心身の状況を把握し、疾患を引き起こす要因となっているボトルネックを見いだし、その解消のための介入ができるスキルです。

 

※ アバター…患者の状態を把握するために援助者・精神科医の内面で生成していく患者像のこと。もともとは、ゲームやSNSなどで使われる、その人の「分身」となるキャラクターを示す言葉。複数のイラストの中から自分に合うものを選ぶだけのこともあれば、詳細に作り込んで自分自身と見分けがつかないほどの精緻な「立体ホログラム」を生成することもできる。

脳内に患者のアバターが形成されていると、高い共感力を発揮し、その人にフィットした対人援助を提供できることになる。

 

このスキルを獲得するためには、やはりそのための臨床経験を積むことが不可欠です。現状の精神医療は投薬と診断書の発行ができればそれで成り立ってしまいますが、これを何年続けても対人援助スキルは身につきません。

 

通常の保険診療とは別に、かつて私もそうしたように、完全自費のカウンセリングを提供し、最低250時間はトレーニングを重ねる必要があると考えます。

 

意欲のある医師が、1回1回のセッションの中身を振り返りながらこれだけの経験を積めば、保険診療と予約料を組み合わせる20分や40分の診察と、保険のみの10分間の診察で患者が必要とする援助を提供する素地ができるのです。

次ページ「自費でも受けたい」と思われるカウンセリング方法

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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