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資産家の高齢父に突然下った「認知症」の診断
本日ご相談に来られたのは、40代の小川さんです。小川さんの70代の父親は、長年会社経営をしており、多くの資産を築いていました。会社を引退して以後、自宅で悠々自適な生活をしていましたが、雑誌やテレビなどで相続対策にも興味を持ち、盆や正月に家族で実家に集まったときには、「僕も相続対策をしたほうがいいかもしれないなぁ」などと口にするようになっていたそうです。
小川さんが父と会うのは年に数回で、会ったときは、「父さんが元気なうちに、不動産を買うのはどうだろう?」などと相続対策について相談を持ち掛けられましたが、最近の小川さんは仕事が忙しく、なかなか連絡を取ることもできていませんでした。
そんなある日、小川さんのもとに突然、60代の母親から連絡が入りました。
「最近、お父さんの様子がおかしいの…」
友人と食事に行った次の日に、もうその出来事を忘れていたり、直前に話したことを覚えていなかったりといったことが、頻繁に起きているというのです。慌てた小川さんが、母親と一緒に父親を病院に連れて行ったところ、医師から認知症の診断を受けました。
それまで元気が取り柄で、大病などしてこなかった父だっただけに、家族の受けたショックは非常に大きいものでした。
認知症による「判断能力が低下」で相続対策に不安が
父親の認知症が判明してから暫くして、小川さんは、ふと、認知症になった父と、相続対策について話したことを思い出しました。
「このまま父親が亡くなった場合、父の資産はどうなるのだろうか?」
いまできることがあれば、すぐにやっておいたほうがいいのではと思い、インターネットで情報を調べてみたところ、「認知症になって判断能力が低下した場合は、相続対策ができなくなる」とありました。
不安に駆られた小川さんは、相談先を探し、筆者の事務所を訪れたのでした。
相続対策の「あと回し」が引き起こす悲劇
小川さんのように、家族の認知症で不安になり、相続についてできることはないかと相談に来られる方は少なくありません。
なかには「相続について、そもそも考えたことすらなかった」という方もいますが、どちらかというと小川さんの父親のように、早くから相続対策には興味はあっても、まだ元気だからといって本格的な検討をあと回しにしてしまっていた方のほうが、多いように感じます。
その背景には、認知症等になって判断能力が低下することが、相続対策にどのような影響を及ぼすか充分に周知されておらず、また、本人も思い至らないということがあるかもしれません。
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