(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢となり、見晴らしのいい高台の戸建てから、便利な立地のエレベーター付き公営住宅への入居を希望する夫婦がいました。しかし、公営住宅の入居用件には「持ち家のある人は不可」とあります。愛着のある家なので、売却するには忍びなく、ひとり息子に贈与したいと考えています。なにかいい方法はあるのでしょうか。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

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公営住宅に入居希望の夫婦、持ち家の存在がネックに

本日のご相談は、Aさん(72歳)とその奥様(70歳)です。Aさんは、長年金融系の会社で働いてきましたが、7年前に定年を迎え、いまは奥様と旅行に行くなど、のんびりした生活を送っているそうです。

 

Aさんは、市街地からほど近い閑静な住宅地に築35年の一軒家を所有し、住宅ローンも完済しています。自宅は高台に建つ2階建てですが、年齢のせいか、最近は帰宅時の坂道の歩行や、自宅の階段の上り下りがきつくなってきました。大きな病気や持病はないものの、市街地にあるエレベーター完備の便利な公営住宅に引っ越しを検討しています。

 

ただ、公営住宅に引っ越しをするにあたり、持ち家があっては入居できないとのことで、売却を検討していますが、立地からこだわり抜いた注文住宅で、長年の想い出や愛着もあるため、なかなか売る気になれません。

 

できれば1人息子に譲りたいと考えているそうですが、その際の税金や契約がどうなるのか分からず、不安に思って相談に訪れたとのことでした。

愛着あるわが家、売却するより息子に贈与したいが…

公営住宅は、同種の物件より賃料が割安なケースが多いことから人気が高く、抽選が行われるのが通常ですが、入居の条件も厳しく、収入要件や資産要件等、制限が設けられている場合がしばしばあります。

 

今回のAさんのケースでも、資産要件として「持ち家があると入居できない」という制限があり、要件を満たさないAさんは、このままでは入居できません。

 

Aさんが息子さんに不動産を譲りたいと考える理由は、このような事情からでしたが、Aさんの例に限らず、不動産やその他資産をお子さんに譲りたいという方の相談はよくあります。そして相談者の皆さんは「どんな方法(契約)によって譲り渡すのか」「贈与税等の税金がどうなるのか」を気がかりに思っています。

 

では、親から子へ不動産を譲渡する場合、どのような手順を踏むことになるのでしょうか。

贈与したくても、多額の「贈与税」が心配で…

親子であっても、不動産を贈与する場合は原則として贈与税が発生します。資産内容によっても変わってきますが、贈与税は相続税よりも高額となることが多く、検討したものの、多額の贈与税を支払ってまでは贈与しない、という選択になることが多いようです。

 

今回のAさんについても、不動産をお子さんに贈与するとなると、お子さんに多額の贈与税がかかってしまうため、通常なら贈与をためらってしまうところです。

 

さてここで、Aさんの資産構成を見てみましょう。

 

Aさんの資産構成

 ●自宅不動産(土地、建物)…… 約800万円
 ●預貯金………………………… 約1,700万円
 ●生命保険………………………… 約500万円
 ●合 計           約3,000万円

 

Aさんの資産は上記の構成で、合計約3,000万円でした。Aさんの計画では、自宅不動産を手放して賃料が比較的安い公営住宅に入居し、残った預貯金と年金で余生を過ごすというものでした。しかしそこで「自宅不動産を手放したくない」という思いがネックになったわけです。なにかいい方法はないのでしょうか?

 

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