(※画像はイメージです/PIXTA)

「相続対策はいつ頃から始めるべきなのだろう…」。そう気にされている方は少なくないでしょう。自身が元気に暮らしている間は、考えることに特に抵抗があるかもしれません。しかし、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏によると、相続対策はいつ始めても早すぎることはなく、遅すぎることもないのだといいます。今回は古沢氏が、事例をもとに、有効な相続対策について解説していきます。

「債務を引き継ぐこと」も相続対策の一環

借入金の返済期限を延長した場合の相続財産と債務、相続税の推移について説明する上で、Aさんがお父様に対して強く主張したのは、「日々自由に使えるお金が増え気持ちに余裕ができること」でした。

 

もともと倹約を心掛けているお父様ですが、今回Aさんの話を聞いて、ご自身の趣味にお金を使ってみたい、余裕があれば孫たちに資金援助もしてあげたい、とお話をしてくださいました。

 

また、返済計画によっては、近々発生する賃貸マンションの修繕費用の一部を捻出することも可能であることを説明したところ、金融機関に返済期限の延長の相談をすることについて、賛同をしていただけました。

 

返済期限の延長に加え、お孫様への贈与や修繕費としての現預金の消費などを考慮した上で、改めて相続財産と債務、相続税の推移資料を作成したところ、ある程度の期限延長が可能であれば、相続税額も減少することがわかりました。

 

Aさんはお父様の相続について、金融機関の担当者に事前に相談をしており、今回作成した資料を提出すると、担当者はすぐに話を進めて、返済期限の延長計画や追加で発生する利息の試算など丁寧に対応をしてくれました。

 

今回、金融機関で返済期限の延長を承認してもらえたのは、Aさんのお父様が、不動産事業を堅実に続けてこられ、一度も遅延することなく借入の返済をしてきた実績があったからと考えます。

 

また、賃貸マンションに収益力があり、Aさんが事業承継をする計画がしっかりと確立されていることが評価されたようでした。

 

「借入金(負の財産)を残しておいた方が、相続税が少なくなる」というのは、特にご高齢の方の相続対策においては一般的な考え方です。

 

ただ今回の事例では、息子に借金を残したくない、というお父様の思いと、それに疑問を感じていたAさんが、「今生きている時間をより楽しく充実させること」を第一に考え、返済期限の延長という選択をしたことに意義があったと思いました。
 

 

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