隣駅の不動産価値を「比較・検証」すると…
ではいよいよ、新幹線開業駅の隣駅の土地価格推移について検証しましょう。まずは隣駅のラインナップです。
長野駅の隣 → 北長野駅(北しなの線)、安茂里駅(信濃本線)
飯山駅の隣 → 北飯山駅、蓮駅(いずれも飯山線)
上越妙高駅の隣 → 南高田駅、北新井駅(いずれも妙高はねうまライン)
糸魚川駅の隣 → 梶屋敷駅(日本海ひすいライン)、姫川駅(大糸線)
黒部宇奈月温泉駅の隣 → 舌山駅、長屋駅(いずれも富山地方本線)
富山駅の隣 → 稲荷町駅(富山地方本線)、西富山駅(高山本線)
新高岡駅の隣 → 二塚駅、高岡駅(いずれも城端線)
金沢駅の隣 → 東金沢駅、西金沢駅(いずれも北陸本線)
次に、各隣駅の相続税路線価から算出した土地価格の伸び率です。
※北飯山、蓮、北新井、梶屋敷、姫川、舌山、長屋、二塚の8駅は路線価が定められていなかったため除外します。
★北長野駅(北しなの線)
2015年の土地評価額:56,000円/㎡
2020年の土地評価額:55,000円/㎡
評価額の伸び率:▲1.8%
★安茂里駅(信濃本線)
2015年の土地評価額:51,000円/㎡
2020年の土地評価額:51,000円/㎡
評価額の伸び率:0%
★南高田駅(妙高はねうまライン)
2015年の土地評価額:40,000円/㎡
2020年の土地評価額:35,000円/㎡
評価額の伸び率:▲12.5%
★稲荷町駅(富山地方本線)
2015年の土地評価額:35,000円/㎡
2020年の土地評価額:37,000円/㎡
評価額の伸び率:5.7%
★西富山駅(高山本線)
2015年の土地評価額:34,000円/㎡
2020年の土地評価額:35,000円/㎡
評価額の伸び率:2.9%
★高岡駅(城端線)
2015年の土地評価額:84,000円/㎡
2020年の土地評価額:78,000円/㎡
評価額の伸び率:▲7.1%
★東金沢駅(北陸本線)
2015年の土地評価額:60,000円/㎡
2020年の土地評価額:62,000円/㎡
評価額の伸び率:3.3%
★西金沢駅(北陸本線)
2015年の土地評価額:68,000円/㎡
2020年の土地評価額:66,000円/㎡
評価額の伸び率:▲2.9%
ご覧いただいて分かるように、5年後の土地価格は微増または減少という結果となりました。
隣駅の皆様にとっては残念な結末となり恐縮です。しかし、ここで毎年発表される土地価格に関するニュースについて思い出してみてください。路線価の変動率全国平均は1.6%前後(2020年)が普通なのですから、稲荷町駅の5.7%や、西富山駅の2.9%、東金沢駅の3.3%は高騰している類と考えてよさそうです。
さらにいえば、金沢駅の62.7%は驚異的な数字です。総体的に見れば新幹線開通による経済効果は明らかで、そこに観光・ビジネス誘致が可能な資源が揃えばより高いリターンが望めるということです。前述の糸魚川駅の周辺も、風光明媚な海辺が近く、ヒスイ海岸やフォッサマグナといった自然観察スポットにも恵まれています。
加えて金沢に引けを取らない海産グルメの宝庫でもあります。そういった観光資源をよりアピールすることで、状況は劇的に改善されるのではないでしょうか。
観光・ビジネスニーズがない場所は「恩恵に浴せず」
リニア中央新幹線の開業を控え、新駅予定地周辺やその隣駅エリアの土地価格高騰がまことしやかに噂されていますが、実際に高騰が見込めるかどうか、近年開業した北陸新幹線の事例で検証した結果、以前から観光・ビジネスニーズが高かったエリアは高騰し、そうでないエリアは微増、横ばい、なかには下落も見られました。
単に新たなインフラに便乗するだけでは土地評価は上がらないため、各エリアで秘めたるポテンシャルを発見しアピールする努力が必要になることが分かりました。ただし、昨今のコロナ禍や経済の動きによってもその成果は流動します。たった5年のデータで結論を出すことも時期尚早かも知れません。
10年、20年と長い目で見ながら、先行投資していく勇気も必要です。
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】