金融危機には至らず、バブルも当面崩壊しないだろう
市場ではリーマンショックの再来を懸念する向きもある。「中国の不動産融資は6月末時点で50兆7800億元と10年前比5倍に膨らみ、中国の名目GDPの約半分に相当する規模となっている。また、2020年の地方政府の歳入に占める土地売却の割合は31%だった。
中国銀行の中国本土における融資では、不動産、建設、住宅ローンが41%を占める。また不動産貸付における不良債権比率は前年の0.4%から今年の6月時点で4.9%まで上昇している。
住宅ブームを背景に家計の借り入れは大幅に増加し、GDPに対する家計債務は5年前の44%から62%まで上昇している。」(ウォールストリート・ジャーナル2021年9月7日)
しかし中国政府には恒大集団の全面的な崩壊を回避できる能力があるとみられる。中国は金融システムが閉鎖されており、主要銀行は国有銀行であるほか、法の支配が緩い。
政府が企業再編の指揮をとりシステミックな崩壊を回避することが可能で、公的資金注入に5、6年もかかった日本とは全く事情が異なる。早期に解決策が浮上し、中国当局が金融政策のさらなる緩和に動けば、深刻な不動産不況を当面は回避できるだろう。
沿岸地域の主要都市住宅価格は8月も値上がりが続いている。また全国の住宅在庫は前回2015年の住宅市場低迷時よりもはるかに低い水準にある。そのため、対応策が打ち出されれば、下値は支えられるだろう。
2021年秋口から2022年初頭にかけて、中国経済の成長に著しいブレーキがかかるのは不可避だが、中国当局が断固とした行動に踏み切りこれ以上の事態悪化は阻止されるのではないか。
日本を含め世界株価は堅調さを維持しており、中国発世界金融危機には至らない、との見方が優勢である。
但し、過去20年間続いた中国の長く極端な過剰債務と過大投資に支えられた成長ストーリーは、恒大集団の危機で曲がり角を迎えたことは間違いないだろう。
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