(※画像はイメージです/PIXTA)

自民党総裁選をはじめ、政権の行く末というのは医師たちにも気になるところですが、昔の日本では、こうした変革時には命のやり取りがされたものでした。幕末期においては黒船来航などを機に、それまで徳川幕府のもとで300年近く続いた泰平の世は、風雲急を告げることになります。やがて迎えた動乱期に活躍した新選組も、時代の流れにその命運を大きく左右されました。平安の世から動乱の時代へ移り変わったこの時代を生きた彼らですが、命のやり取りの続く毎日だったようです。そんな彼らの名を一躍有名にした事件。それが池田屋事件でした。

前代未聞のクーデター計画に動いた新選組

京都の治安を維持するという名目で、志士たちの取り締まりをしていた新選組が、四条木屋町で薪炭商・枡屋を営む枡屋喜右衛門を、壬生の屯所へ連行したのは元治元年(1864)6月5日の朝方でした。この枡屋喜右衛門とは世を忍ぶ仮の姿、その正体は近江の郷士で古高俊太郎という者でした。古高は筑前藩御用達商人として、尊王攘夷派の武器調達をする係がその役目。

 

新選組は連行した古高に厳しい拷問を加え、クーデター計画を知ることになったのです。それは、長州藩を中心とした尊皇派の志士たちによって祇園祭前の烈風の夜に京都市中に火を放ち、混乱に乗じて京都守護職・松平容保と一橋慶喜らの命を奪い、孝明天皇を京都から長州へ遷し新政府を樹立するというものでした。

 

前代未聞のクーデター計画を知った新選組局長の近藤勇は、このことを京都守護職、京都所司代に報告すると同時に、自ら率いる隊と土方歳三配下の隊の計2隊(土方の隊を松原の隊とに分け、3部隊とする説もあり)にて、志士たちの潜伏先の捜索に動きだしたのです。

 

古高俊太郎の捕縛を知った志士たちは、クーデター計画の露見を恐れ、時を同じくして新選組から彼の奪還を計画。三条木屋町の宿・池田屋に集結した長州藩・土佐藩・肥後藩などの尊皇派の志士がどのように古高を奪還するかという話し合いをしていました。人目を忍ぶこの会合は、池田屋の2階で行われており、そこには吉田松陰の愛弟子吉田稔麿、肥後の宮部鼎蔵らおよそ30人が参加していたといいます。

 

また、そのなかには会合に出席しようとしていた長州藩士の桂小五郎(のちの木戸孝允)の姿もありました。ただ、桂の到着は約束の刻限よりも早かったため、いったん池田屋を出て対馬藩邸に戻ったそうです。池田屋襲撃の知らせを聞き、すぐさま戻ろうとするも止められたために、危うく難を逃れたといわれています。

幕末騒乱のプロローグとなった池田屋事件

新選組は鴨川の両岸にある宿屋をしらみつぶしにしました。東側を土方の部隊が、西側を近藤率いる10名の部隊が捜索したのです。午後10時頃、三条小橋の西にある池田屋に近藤たちがたどり着きました。6名を宿の外に配した近藤は「旅籠改めである」と声をかけ、沖田総司、永倉新八、藤堂平助の3人を連れて宿のなかに入りました。

 

永倉、藤堂を1階に残した近藤は沖田を連れ、池田屋の2階へあがり、表座敷の襖を開けました。そこに集まっていた志士たちは不意をつかれたこともあり、手許の銚子や膳などを投げて抵抗。そのまま逃亡を図ろうとして、行灯の火を消しました。それまで明るかった室内は暗闇となり、敵味方の区別もつかないなかで、斬り合いが始まったのです。

 

池田屋の1階では、永倉と藤堂を中心とした隊士たちが中庭と出口をかためていました。逃げ出してきた志士たちはこれを突破しようと、ここでも激しい斬り合いが発生しました。斬り合いは1時間近く続きました。少人数で斬り合っている近藤たちは、志士を斬り捨てる作戦を取っていました。そして午後11時を過ぎたころ、反対岸の探索を終えた土方の部隊が到着、近藤たちの加勢を始めたのです。そのため作戦は斬り捨てから捕縛へと変更、20人ほどの志士たちを捕まえることに成功するも、10名には逃げられてしまいました。

 

歴戦の猛者たちで構成された新選組のなかでも、永倉や藤堂は腕利きの剣客でした。その彼らが重傷を負うほどの斬り合いだったというのですから、いかに激しかったのかが想像されます。また、新選組にも死者は出ており、斬られて即死した奥沢栄助のほか、重傷の安藤早太郎と新田革左衛門がのちに死亡しました。

 

志士たちもまた、その被害は大きく、池田屋内で宮部鼎蔵を含む5人が、吉田稔麿など11人の死亡が路上で確認されたのです。池田屋での死闘が終わったあと、新選組は後から駆け付けた会津藩、桑名藩兵とともに市中探索を続行し、残党掃討にあたりました。

 

この池田屋事件で、会津藩には幕府から500両の恩賞が下り、これが新選組への褒賞となりました。こうして新選組は一躍名を馳せることとなり、絶頂期を迎えたのです。

 

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