アンチエイジングや免疫機能向上にも効果あり…「機能性表示食品」の抱えるリスクとは (※画像はイメージです/PIXTA)

コロナ禍において、免疫機能への関心が高まり、機能向上につながる食生活の見直しなども図られている。「機能性表示食品」による免疫機能に関する事項も見逃せないところだ。しかし、2015年より始まったこの表示制度には、ある問題点も。衆議院議員であり医師でもある吉田統彦氏に、食生活の重要性に伴う機能性表示食品の抱えるリスクについて紹介してもらう。

免疫能を高める食習慣の重要性

COVID-19は、我が国の医療体制の欠点を露呈し、社会活動における大きな変動及び変革を引き起こしました。

 

私は日本抗加齢医学会で評議員を務めておりますが、抗加齢医学(アンチエイジング医学)とは、加齢という生物学的プロセスに介入を行い、加齢に伴う動脈硬化や、がんのような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿をめざす医学とされています。(日本抗加齢医学会HPより)

 

過去に人類が経験したパンデミックの時とは異なり、最近の感染症では、今回の新型コロナウイルス感染症も含め、感染の成立や発症の有無は、一般的にヒトにおける免疫能に大きく関与してきているという点はもはや周知の事実です。

 

そして、多くの感染症への対応にはワクチンによる感染予防が最も効果的であることは証明されていますが、未知の感染症ではワクチン開発が後手になります。つまり、新型コロナウイルスの対策として、ヒトの免疫系のコントロールがますます重要と言えます。すなわち、感染症に打ち勝つためには、免疫能を高めることが必要であり、それには生活習慣、特に食習慣は重要です。

健康寿命の延伸を図ることができる食品も…

近年「機能性表示食品」や「特定保健用食品」制度の導入もあり、食品の成分表示に関する研究が進展し、様々な食品の生理機能が明らかになり、同時にアレルギーや免疫機能低下による疾患などの増加もあり、食品の免疫調整機能にも国民の関心が集まっているといえます。

 

抗加齢医学の立場から考えると、「機能性表示食品」などが謳う様々な生理機能には結果的に人の健康寿命の延伸を図ることができるものもあり、このような健康食品の生理機能には重大な関心を寄せています。

 

特に現在の状況では、新型コロナウイルスを含む様々な感染症拡大の抑制とすぐに訪れる団塊の世代の後期高齢者化に向けて、「機能性食品による予防医学」への取り組みも必要かもしれません。

 

ただ、免疫力や疾患への抵抗力といった指標は医学的そして多角的な評価が必要なものであり、機能性表示食品における表示は困難です。もとよりエビデンスがなければ認められるべきではありませんが、今後の新たな感染症のパンデミックやアウトブレイクに備えて、明確なエビデンスがある場合に限定してですが、このような機能性を持つ食品の開発や機能性表示の適切化や明確さを進める必要があるかもしれません。

 

しかし、現状のようなサプリメントとして機能性食品の摂取を進めることには様々な困難や限界が予想されます。その中で、一般食品の形体を持つ食品にも機能性を求めることも一つの方向性だと考えます。

誇大広告は「振り込め詐欺」とも

生活習慣病などの疾患や感染症の予防のために、現在様々な機能性食品が「機能性おやつ」として商品化されています。以前、テレビで放送されて人気だった『仁』という漫画原作のテレビドラマの中で、江戸時代に多くの命を奪ったビタミンB1欠乏症「脚気」に効く薬として、「安道名津(あんドーナツ)」を作って患者に食べさせるシーンがありましたが、このような「機能性おやつ」のようなものも、前提としてエビデンスがしっかりと確立されることによって、今後ますます機能性食品として大きな役割を果たす可能性があると考えます。

 

一方で、このような機能性食品においては、その過大な広告宣伝が問題になっています。効能効果を謳う健康食品に関して、以前テレビやネット広告でよく目にしていた「トイレが油まみれになる」といった誇大な表現や、「個人の感想です」等の表現は明白に印象操作であり、視聴者は騙されて効果効能のない健康食品を購入させられており、極めて大きな問題です。厳しい言い方をするのであれば、効果が無い、時として有害な食品やサプリメントに対価を支払わせることは、形を変えた振り込め詐欺とも言えるかもしれません。

機能性表示食品の抱えるリスクとは?

機能性表示食品に関してはより本質的な問題があります。

 

2015年にできた機能性表示食品も「有効性/機能性・安全性の評価」に関して、最終製品によるヒトでの試験または文献や論文を引用することによって、「事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け」出ると規定されています。

 

特定保健用食品と違って消費者庁長官の許可を受けたものではありませんが、この文献や論文というのは曲者で、査読もろくにせず、アクセプト(承認)される雑誌は多く、特に和文雑誌においては山ほどあるのです。このような「科学的根拠」による機能性表示食品が巷には溢れています。そして、これでは「科学的根拠」は恣意的に作成できることになり、せっかく作った機能性表示食品の意味がなくなってしまいます。何より問題なのは、消費者が騙されて、危険な食品を摂取するリスクが高まっていることです。

 

本来の査読というのは、レビュー(批評、評論そして見直し)やリジェクト(却下)などがある当然厳しいものであり、こういった食品から不適当なものを排除するためには、機能性表示に必要とされる論文のクオリティをもっと高く設定する必要があるのではないかと考えています。

 

以前厚生労働省の医薬衛生局長にお聞きした際に、厚生労働省ではエビデンスとして認めるのは英字論文のみだとおっしゃっており、機能性表示食品でも、具体的には、せめて査読のある英文雑誌でインパクトファクターの存在する論文以上とするなどの規制が必要だと考えています。

 

志があり、消費者に良いものを届けようとする会社ならこのような基準であってもしっかりとしたエビデンスを必ず明示すると考え、消費者庁などに善処を求めたいと思います。
 

 

 

衆議院議員、衆議院内閣委員会委員、消費者問題に関する特別委員会委員、医学博士

2005年名古屋大学医学部大学院博士課程修了。医学博士。
メリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学のフェローであった際、2019年にウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフとともにノーベル医学・生理学賞を受賞したグレッグ・セメンザと共同研究を行った。

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